第7話

女将の注いだ酒を飲みながら、Mr.龍は庭先の水の音に耳をすませてため息をついた。

が、次の瞬間には目をかっと見開いて暗闇の中にある何かを見つめた。まるで人斬りの鋭い剣のような目つきで…。


女将、私には分からない…。誰一人信頼できるものは周りにいない。無能そのものだ。私の頭脳についてこれるものはいないに等しい。

しかし、ペンタゴンの奴らには参る…。

ベイジンの動きは手に取るように分かると岡崎先生は言った。

ただ一つ問題は…この戦いが終わる頃にはこの国が生き残る選択はただ一つ。時間を戻すしかない…。


私が終わるか、Mr.プレジデントが…。しかも誰の目にも分からないうちに済む。ペンタゴンの奴らの脳内にイルカ部隊のマグマデッキ核の傘から雨を降らす。


ベイジンの動きは恐ろしいほど速い。我が国の情報など筒抜けだ。

私の命など首相官邸に潜むくだらん輩の一発で十分消せるところをグズグズしている…。


いつもそうだ。未来的な戦争で実に簡単に済むところをペンタゴンの奴らは何を恐れているのかさっぱり分からないのだ。


単に私を生かしてる訳は、Mr.プレジデントの望む意味ある死に方を私にさせることだ。

まるで茶番劇のように我が国を盾に奴らは傷ひとつ追わないシナリオで事を済ます…


トキオで公開処刑などトージョーらだけで最後だということだ。近未来の戦争はそんなものではない。瞬時に終わる所を愚鈍な国民にワザワザ見せている茶番を演じるのにも私はいい加減に疲れたのだ。そんなものA Iの仕事で人間のやることではない。


ただ確かなのは我が国は1945にはもう滅びているという事だ。


2020にコロラドから始まり、世界的に流行った新型のピール菌で世界の大半は滅びる計算だった。ペンタゴンの思惑は見事に外れた。翌年にはベイジン大学のDr.リーが見事にその謎を解いてしまったのだ。


ハーバードの頭脳であるDr.スティーブたちは見事にペンタゴンの連中から抹殺された。


「先生がベイジン大学から帰られた時の誇らしげな顔ったらなかったわ。」


女将が笑って言った。


またいつものことだ。先生の予想通りDr.リーとの研究は3日で終わった。先生がまたもや核心を突き止めた。ただのアル中の爺さんがなあ。さすがは先生だ。


Mr.龍はいささかいつもの冷静さを失っていたが、料亭の女将に何もかもをぶちまけるほど野暮ではなかった。女将からハーバードの僕のところに連絡がすぐ入る事を彼は見抜いていたからだ。一種のフェイクだ。

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