第5話

Dr.スティーブハリスは不可思議な笑みを浮かべてこう言った。

「全ては君の責任の元にこのプロジェクトを終える。間違いなくミスター龍には死んでもらわなきゃならんのだ。その為に君の頭脳を使う事になる。ピリオド。」


Dr.スティーブの秘書のジュリーハドソンは漆黒の髪をなびかせて、僕を地下の研究室まで案内した。


貴方はもう日本の土を踏むことはないでしょうね。これは国家を挙げたプロジェクトなの。貴方はもう日本人でもない。そしてアメリカ人でもない。ただのMr.ケンとして歴史に名を刻むこともなく、一生をここで終えることになるの。


どうでも良いさ。

僕はジュリーにそう答える。感情のこもってない無機質な声でそう答えた。

今更日本へ帰ったところで僕の居場所はあるまい。洋子もゆきも幸せにやってくれればそれで良いのだ。


次の火曜日にはスティーブ博士はスウェーデンに飛びますので、何かあれば私に伝えてください。とだけ事務的に言い、ジュリーは研究室の扉を閉めてどこかへ行った。

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