第6話:女性を迎えるための相談
女性を迎えるための相談
「え、専用ルーム? そんなのあるの!? 見てみたい! ねえ、叶の家連れて行ってよ!」
「え?」
あまりに意外なことを言われて固まる俺。
まさかプラモルームがあるといって行ってみたいという女性がいるとは思わなかった。
しかも、まともに話して数時間の相手がだ。
「なに? 私を連れて行きたくないわけ?」
「いや、特にそういうわけじゃない。小夜って人目気にしてただろう? 男の家に行くって大丈夫なのか?」
「あー、そういうことか。なーんだ。叶も恥ずかしいってこと?」
「いや全然」
俺はスパッとそこは答えておく。
俺は今世は結婚しない、遊ばないと決めているからな。
いかにスタイル抜群の美少女である静紀小夜であろうが、俺ははっきり伝えておく。
「じゃ、問題ないじゃん。それとも実はすごく汚れている?」
「いやそれもないな。ま、友達になるのに時間は関係ないってことか」
「そうそう! よし決定!」
断る理由もないので小夜に押し切られてしまう。
いや、別に何もないからいいのか。
なんか物語のヒロインたちと仲良くなるのが目的でちょっと付き合ったが物凄くうまくいくので正直驚きだ。
ま、いい方向に転がっていると思おう。
「とはいえ、もういい時間だしな。家の人が心配するだろうし今日は解散だな?」
「あー、そういえばそうだよね。もう8時か」
そう結構話し込んでいたようで、すでに時計は夜の8時を回ろうとしている。
外も夏になってはいるが暗くなり始めている。
「園田。桜乃と盛り上がるのはいいが、いい時間だぞ」
「お、ほんとでござる。桜乃殿。今日はここらへんで失礼するでござるよ」
「あ、そうだね。また来てね」
ということで、俺たちは何も知らない桜乃にレジを任せてしれっと支払いを済ませて外に出る。
「あれ? 叶、おじさんお金いらないって……」
「いいんだよ。美味かったし、いい時間を過ごさせてもらったからな」
「うむ。叶殿の言う通りです。ちゃんと受け取るべきものは受け取るべきなのでござるよ」
「で、それはいいとして、家に来るって話、いつにくる?」
「あ、流石に今日はもう遅いし明日も学校だしねー。次の休みの日曜とかどう?」
「了解。ちょっと掃除でも頑張っておくよ。女の子がくるしな」
「あはは。ちゃんと綺麗にしておいてよ。あ、連絡先。LIFE交換しよう」
俺はこうして小夜の連絡を先をゲットして別れる。
園田と一緒に帰りながら……。
「幸先はいいのでござろうな」
「だな。というか簡単に接触できるとは思わなかったが」
「本当に拙者たちモブでござるのか?」
「本編には男の名前一つ出てこなかったな。ああ、そういえば桜乃に告白していたサッカー部のイケメンってのはいたな」
「定番でござるな」
「だよなー。だけどまだ初日だ。落ち着いて考えよう。園田はどうする? 今日は家に帰るか?」
「いや、今日はそっちに泊まるでござるよ。作業はしてないでござるからな」
そんなことを話しながら俺たちは自宅に戻り、いったん日課をこなしつつ状況を整理することになる。
「とりあえず、今度の日曜日に静紀小夜が家にくる。これは普通に受けたけど間違いじゃないよな?」
俺は執筆をしながら別の席でゲームか創作活動をしているであろう園田に質問をする。
「関係を持つという点では間違いではござらん。この関りがバッドエンドルートのフラグだとアウトでござるが、そんなの分かりっこないでござるが」
「そんなミラクルというか、予測不能の結果を怖がっていたら何も動けないからな。俺の行動が正しいって思うしかない。元々最初っから原作を離れるんだから気にしてもしょうがないしな」
「そうでござるな。元々、原作の知識というか未来の知識というのは、その流れに沿っているから使えるのであって、流れから外れているとどうなるかわからないでござるからな」
「どこか、一点だけ変えれば何とかなるって話じゃないからな。今回の場合、魔法少女になるであろう桜乃と関わって、死ぬであろう小夜を救って、町を救わないといけない」
「というか、世界を救うみたいな話でござったからな。元凶も不明と来たものでござる。3巻で終わったのは痛いでござるな」
「本当にな」
出版は3巻で終わったものの、ネット小説でせめて完結しろよと思う。
「盛大なブラフだとよかったのでござるが……」
「ま、それを確かめるためにも桜乃と小夜と仲良くなって、魔法少女になるかどうかを確かめる必要がある」
「それで思いたしだでござるが、いきなり魔法少女になるでござるか? マスコットてきな物はいなかったでござるか?」
「いたぞ。アドバイザーみたいな子猫に天使の羽を付けたようなイミフ生物が。だからこそ、ハートフルストーリーを信じたんだろうな桜乃は」
「えー、今どきマスコットを信じるってないでござるよ? マスコットは悪魔の契約使者でござるし」
「それはあのアニメだけだ。ちゃんと昨今のまともなアニメはマスコットは普通に味方だからな。偏見持ちすぎるのも駄目だ。ほらプリキュ○とか」
「あー、あれ、魔法少女でござるか? どこかのアツい拳をぶつけ合う少年漫画のイメージでござるが?」
「否定はしないがあれも魔法少女ものだからな。というかわかってて言ってるだろう」
俺よりも範囲の広いオタクである園田がこの手の話がわからないわけがない。
「無論。というか、叶殿がノーマル魔法少女を知っているとは思わなかったでござるよ」
「主流はしっているさ。俺もオタクだしな。とはいえ、マスコットを調べるのは必要だな」
「むしろ、そのマスコットからできうる限り情報を集めることが必要でござるよ。吐き気を催す邪悪である可能性もあるでござるから。ま、真実を知った瞬間暗殺というのも警戒しないといけないでござるが」
「その可能性はあるが、聞かないわけにもいかないからな。どう聞くかを考えておくべきか」
簡単に言えばだれから死ぬかという話だな。
「むむ。確かにそうでござるな。みんなで聞いてみんな殺されてしまっては意味がないでござる。となると誰か犠牲にということになるでござるな」
「そこは考えるまでもない。俺が行く。園田も桜乃も半信半疑だろうしな。俺が適当に録音機械と携帯を通話モードで話を聞くさ。それをそっちが遠方で聞いておく。俺に何かあればマスコットを怪しむことだ」
「あっさり自分の命を懸けるでござるなー」
「賭けられるものがこれだけだからな。何より、しくじると俺のこの城が無くなる。惜しくはない。やるだけの価値はある」
そう。俺はこの生活を守るために桜乃や小夜という魔法少女に干渉するのだ。
そのためなら、俺ができる範囲の犠牲はためらわない。
「ま、本当にそんなことが起こるのかって話になるけどな。俺のたわごとで済めばそれはそれでいいさ。これで一本小説書けそうだし」
「これもネタにするでござるか。まあ、魔法少女系は書いてなかったでござるし、いいジャンル開拓になるかもしれないでござるな」
「そうだな。ともかく、まずは同志小夜が来る準備でもしようじゃないか」
「といっても、別に片付けるも何もないでござるが」
園田の言う通り、実の所家の掃除をする必要はない。
何せ毎日掃除しているからな。
「仕事場でもあるからな、清掃は心がけている。とはいえ、何かお出迎えするための料理とかお菓子ぐらいは準備しておかないとな」
「普通にお菓子のストックはあるでござろう? 食材はまあ、買うなら買った方がいいでござるが……。やけにやる気満々でござるな」
「お客さんだしな。ケーキでも買ってくるさ。何より小夜とは今後の展開で必ず交友関係は必要なんだしな」
「逆に頑張りすぎて引かれないといいでござるが」
「それを言ったらこの家でまず引くと思うけどな」
車庫兼プラモ用ガレージ一つ、喫茶店用の別店舗一つ、そして本宅一つと自分でも言ってなんだが贅沢したと思うわー。
「ま、それもそうでござるな。しかし、以外でござったよ。叶殿が人をこの家に招こうなんて。めったにないでござろう?」
「そりゃな。下手なガキに教えるとたまり場にしそうだし、ここは俺の城だ。めったなことでは招待しないさ。だが、今回は理由が理由だ。持てるものは全部懸ける。ここが拠点となりうるなら魔法少女になった桜乃や小夜は……」
「なるほど。下手に家に集まるよりもこっちにする可能性があるでござるな」
「モブでありながらサポートするっていうのに説得力が出るだろう? 職業もばらして金もあるといって安心させる。ゲスイけどな」
「ゲスイでござるが、確かに現実的にみると魅力的なサポーターでござるな。本気で本気でござるな」
「さっきもいったが。絶対にこの家と資産は手放せない。敵かなんだか知らんができることは全部やってやるってな」
「確かに、ここがなくなるのは拙者にとっても避けたいところでござる。叶殿が嘘をついているとも思わないし協力するでござるよ」
「ありがとう。とはいえ、今日は普通に日課をやって日曜日の準備は明日からのんびりやろう」
「了解でござる」
こうして、俺たちはどこかの思春期の少年かといわんばかりに女生徒を迎える準備を始めるのであった。
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