百物語−序−

 夜、何人かで集まって怖い話をしていく。一つ話を終える毎に、火のついた蝋燭を吹き消していく。最後の一本が消えた時、怪異が姿を表すというのだ。


 手間も時間もかかるとなれば、それは信憑性の高い降霊術だった。我がS高校心霊研究部は、怪異を見られるものならどんな苦労も惜しまない所存だ。

 百物語のやり方を聞いた私は部員を集めて早速夜の学校に忍び込んだ。側から見たら悪趣味と言われるような道具が完璧に揃った部室は、この降霊術においてもうってつけの場所であった。


「さ、誰から話す?」


 蝋燭に火をつけ終わり合図を出すと、一人が早速手を挙げてくれた。副部長の佐藤君である。彼は部内でも相当なホラー映画好きで、それを元にした都市伝説をよく話してくれる。


「今公開中のホラー映画あるだろ? それの元ネタになった都市伝説さ……」




 蝋燭の火が揺らめいている。私たちの百物語は、夜は、今まさに始まったのだ。





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