机の下
夫を亡くして四〇日経ちました。しばらく右肩から覗き込まれているような感覚が取れません。
でも、不思議と怖くないのです。きっと、亡くなった夫が完全に向こうへ逝ってしまう前に、私たちを見守っているのでしょう。
娘も似たようなことを言っていました。
「あのね、お父さんいるの」
場所を聞くと、リビングの机の下を指差します。
「ここ!」
嬉しそうな娘を見ると、夫がいなくなっても強く生きなければという勇気と元気を貰えます。
四九日が過ぎ、右肩の違和感は無くなりました。娘も、机の下を指さすことは無くなりました。
その日、お盆だったこともあり、お昼を久しぶりに娘と取ることができました。娘がテレビに夢中なのをチャンスと思い食器を洗っていると、嬉しそうな声が聞こえました。
「あ! お父さん!」
ハッとして台所からテレビの方に行くと、娘はテレビの画面を真っ直ぐ指差していました。
そこには、井戸から這い出てくる長い髪の女の姿がありました。
四九日間ずっと家の机にいたのは、本当に夫だったのでしょうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます