伝染

 このご時世なので、私はいまだに仲の良い大学同期との、リモート飲み会が趣味でした。

 頻度は大体週に一度くらいで、4人グループのうち3人は毎回参加するくらいです。そのくらい、みんな好きなことをするにもできない状況で時間を持て余していました。


 この日は4人全員が参加し、また在宅勤務ならではの愚痴などを飛ばしあっていました。

 リモート飲み会の悪いところは、誰かが締めなければ永遠に終わらないところです。その夜もキリがなく、金曜日だったこともありいつの間にか日付を跨いでいました。

 そんな中、誰かが怖い話をしようと言い出したのです。


「いいよ、私怖い話好きだし」


 私を始め、みんなその提案に賛成しました。毎年楽しみにしているホラー番組が来週だということもあり、その傑作選についての話や、人から聞いた体験談を話し合ったりしました。


「そしたら、そろそろガチの話するよ」


 メンバーの中で一番陽キャラなA男が提案しました。みんな固唾を飲んでA男の画面に注目しました。


「これ、先週本当にあった話なんだけど。俺さ、大学サークルでバドやってたじゃん? そん時ダブルス組んでた先輩に誘われて行っちゃったんだよね--心霊スポット」

「うわ、ツッコミどころしかないじゃん」

「まあいいじゃん。風邪引いてないし。それでさ、その心霊スポット、普通の公園なんだけど、夜に行くと高確率で見ちゃうんだってさ。だから俺らも絶対何か撮って帰ろうって言って、適当にネットで拾ってきたやつ試してみたんだ」

「何を試したの?」

「やったのは先輩なんだけど、供えてあった花を燃やしてみた」


 ここで、全員の顔が引き攣っていました。A男のエピソードもそうですが、彼が楽しそうに話すのが不気味でなりませんでした。


「そしたらさ、何も怒らなくて。なんだよーって帰ろうとした時に、その先輩がおかしくなったんだ。急に笑い出してさ、ライターぶん回してんの。もうビビりまくってさ、先輩置いて逃げちゃったんだよね」


 A男は相変わらず笑っていました。右頬を掻いていたのですが、そこには痛々しい火傷の跡がありました。


「その火傷、その時の?」

「ああ、多分な」

「そのあと、先輩は?」

「え? まだ見つかってない」

「見つかってないの!?」

「そうだよ? 当たり前じゃん、ネットにも書いてあったみたいだし」


 A男は何言ってんのみんなと言わんばかりにヘラヘラしていました。


「それ、先輩は知っててやってたの?」

「さあ? DINEのトークで『花燃やすとやばいらしい』ってリンクは載っけてたみたいだけど、そこまで見たかな? 大雑把な人に見えたし」

「え? そのネットの記事探したのって……」


 A男は、ん〜?と軽く流してしまいました。タバコの火をつけた後も、ライターの火で遊んでいます。

 みんな、なんとなく気付いていました。

 A男が嘘をついていること。そして私たちの知るA男も、あの公園に置いていかれてしまったことを。

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