隙間
その日も隙間はあった。どんなに閉めても、目を話した隙に開けられてしまう。
「いい加減にしろよ」
長年蓄積したイライラがついに爆発した。
押し入れにある隙間の奥に向かって、暴言を吐く。それでも相変わらず、隙間の奥にいそうな何かは姿を現さなかった。
ある日、両親が二人とも出張のせいで一人で留守番をしているときに、家の鍵をこじ開けられた。
状況を理解して冷や汗をかきながら、万が一強盗だった時の隠れ場所を探した。しかし、家中の棚が男子高校生のサイズには合わない。
やはり、隙間の向こうしかなかった。
押し入れを開け、少しだけ隙間を開け外の様子を伺う。案の定、見知らぬ男が刃物を持って侵入してきた。
金品を物色する様子を見ながら息を殺し、早く去ってくれと神仏に祈る。
しかし、男はついに隠れ場所の襖に手を伸ばしてしまった。
勢いよく開け、目の前にリビングの光とそれを遮る男の姿が露わになった。
だが男は目の前の自分に動じない。それどころか、何もいないかのように上の棚を物色する。そしてついに、ピシャリと押し入れを閉めて去ってしまったのだ。
助かった? もしかして、姿が見えないようにしてくれていた?
隙間の何かに助けられたのだと安堵し、そして怒りをぶつけたことを反省した。
翌日両親が帰ってくると、家の惨状に取り乱していた。息子が声をかけても反応できないほどに。
しかし、警察が到着したとき、少年は取り返しのつかない事実を知った。
「強盗ですね? 何を盗まれたんですか?」
「通帳や現金はいいんです! 息子を探してください!」
三日後、突然両親は自分の存在に気がついた。親戚の集まりなどがあるたびに、それは神隠し事件としてネタにされるそうだ。
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