第3話 スクラッチアート

高井圭介。28歳。アラサー男子。仕事は工場勤務。安月給。

自由に使える毎月の小遣いは2万円。ちなみに週休二日制である。

金なし、友なし、女なし。でも時間だけは、そこそこある。

そんな俺は、今日もソロ活ライフをエンジョイするのだった。


近頃、アメリカを始めとした海外でブームになっているらしい。

黒いスクラッチ面を爪楊枝や竹串で削ると、キラキラ光るホログラムの線や、美しい色の線が出てくる。それが新しいお絵描き、スクラッチアートだ。

書店や100円ショップで購入する事が出来るらしい。削って絵を描く。

俺もやってみたくなり、手始めに100円ショップへと足を運んだ。

100円ショップの玩具コーナー、あるいは文具のコーナー辺りに並んでいるであろう目当てのスクラッチアートを探して店内をうろついた。


「おっ、あった!これだ。へぇー、下絵が付いている物もあるのか」


花の絵、星座、動物の絵。色々な種類がある。

俺はキラキラ光るのなら星座が奇麗なのではないかと思い、星座の下絵が描いてあるスクラッチアートを購入した。

家に帰って早速開けてみる。真っ黒な紙が3枚出てきた。

どうやら3種類とも下絵が違うようだ。


「100円で3種類も楽しめるのか。それはいいな」


付属の竹串を使って早速、白い線を削っていく。


「これは、かなり気が遠くなりそうだ」


正直舐めていた。もっと気軽にやれるのかと思ったが、奇麗にやろうと思えば、細かい所をかなり慎重に削っていく必要がある為、時間がかかる。


「ふぅ……。これは集中力が試されるな」


コツコツと削っていく事2時間。ようやく1枚の絵が完成した。


「おお、なかなか奇麗じゃないか!!」


しかし今日は、1枚でギブアップだ。

これは1日何枚もやれるような代物ではない……。

集中力が持たない。

これは集中力を鍛えるのにとても良いのではないか?

そんな事を思った。


調べてみると下絵が描いていない無地のスクラッチボードも売っているようだ。

無地なら自由に自分で削って好きな絵を描く事ができる。

絵に自信があれば自分でやってみるのもいいかもしれないな。

まあ俺には出来ないが。


スクラッチアートは、値段は100円から2000円以内で買えるような物が多いようだ。かなり時間をかけてじっくりと腰を据えてやるものだから、暇つぶしには持ってこいだ。コスパ最高じゃないか。

また一人で遊べる良い物を見つけてしまった。





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