異世界と戦争
私はかつて暮らしていた世界とは別の……有り体に言えば異世界にいる。
しかし私にとってそれはさしたる問題ではなく、与えられた役割すらも意味を為さなかった。
今の私は勝ち取った立場と、それにより与えられる恩恵を享受することに無上の喜びを感じていて、それはかつていた前世世界では到底得ることの出来なかったであろう快楽だ。
聞こえるだろうか、響き渡る銃声が。
聞こえるだろうか、大地を轟かす大砲の音が。
聞こえるだろうか、
聞こえるとも! 敵が撃たれ、刺され、砕かれ、命を落とすあの断末魔が!
聞こえるとも! 致命傷を負い、己の死を悟り故郷の家族を想い、涙を溢しながら上げる呻き声が!
目の前で友人が肉片と化し、パニックに陥った新兵がわけも分からず自分の頭をライフルで撃ち抜く様を目にした時などは、絶頂に達してしまいそうになる。
認めよう。私は戦争が好きだ。いや、これは少し違うな。
認めよう。私は殺しが好きだ。いや、これも近いが少し違うだろう。
私が好きなものは圧倒的な暴力だ。理不尽な暴力の前に抵抗する意思を失った者共を尽く蹂躪することに喜びを覚えるのだ。
戦意を喪失し、目の色を絶望に染めた敵に情け容赦なく、そして別け隔てなく最期の時を贈る喜びは、前世の生温い生活では絶対に手にすることが出来なかった最上の快楽だ。
そしてこの快楽はやはり戦場でしか得られないものであり、私は戦争と殺人が好きなのかもしれない。
私、クリスティーナ・レム・バレリーは、この世界を愛している。
争いと悲劇が絶え間なく続く、この異世界を。
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