名前はルイーナ ⑩

後日聞いた話ですが、シャロン様のお父様が貯蓄預金に手を出していたのが分かり、それを賄うためにもシャロン様が個人資産でお店を開いたとこのことでした。それがローシャ服飾店。

そしてそのお店が有名になるとシャロン様のお父様と私のお祖父さん(どちらも私のお祖父さんですが)で乗っ取ろうと計画していたそうです。でもその計画も杜撰過ぎて、成功しようがなかったと言っていましたが、一番驚いたのはそのお店がシャロン様のお店と知らずに乗っ取ろうとしていたこと。身内でも他人でもありえないの一言です……


そして、お父さんの実家はどうなったのかと聞くとお父さんのお兄さんがしっかりと立て直しをしているとのことでした。私にとって伯父にあたるこの方は13歳頃から当主になるためと、隣国の親戚のところで勉強をしていたそうです。シャロン様が伯父に聞いたところ「自分が領地のことで父親に意見を言ったことがあり、それが面白くなかったそうです。それでも跡継ぎとしては必要と思っていたようで親戚のところで勉強してくるようにと追い出された」と言っていたそうです。学校も隣国の学校をでて、知らせを聞いたのはお父さんたちが拘留されているときだったのだそう。

領地は半分以下になったとのことでしたが、カシミール侯爵家にもしっかりと謝罪したことで、シャロン様たちも立て直しには協力したとのことでした。


その時に笑い話として教えてくれたのがクワッド伯爵の執事の事でした。


「6人が連行された後にそのことを知った執事が私のところに来て『当主不在分の資金を提供してください』と言ってきたの。意味がわからないと思わない?だからどうして他人様の使用人のお金など払わないといけないの?と聞いたら『当主からは今後当家に必要な資金は侯爵家から提供するようになったと言われております。当主がなぜか拘留されているため、私が参った次第です』ですって。馬鹿にしてるわよね。もちろん資金なんて渡さず、使用人たちと一緒に塩を思いっきり撒きつけて追っ払ってやったわ」


そう笑ってらっしゃったけど、これって人が変われば逮捕されてもおかしくない案件だと思う。


もちろん当主交代の時にお祖父様のやり方が正しいって思ってた使用人達は一掃されたそう。当主が変な人なら使用人も変になっちゃうのね。

だってカシミール侯爵家には変な使用人は一人もいないもの。


そして私は刺繍職人として、先輩たちに教えてもらいながら、必死に仕事を頑張っていたらその仕事を評価してもらって、ドレスの刺繍もさせて頂けるようになった。


休日の時や、刺繍が完成した時にはカシミール侯爵家に呼んで頂き、娘のように可愛がってもらっている。


エミリア様達には様付けも敬語もやめて欲しいとお願いされ、今では家族のように接してもらっている。


私が18歳までもらえなかった愛情はシャロン様の『父親の分も、母親の分も愛をあげる』という言葉通り、いいえ、それ以上に頂いている。


感謝してもしきれないと一度伝えた時シャロン様に言われた言葉


「その想いは今度はあなたが愛を誰かにあげることで私に返してちょうだい」


私はこの言葉を胸に、今日も笑顔で、誰かの笑顔が生まれるようにドレス作りに励んでいる。







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