鉱山の生活(ダレン)④

こんな毎日に慣れようとしていた時、ミカリーナがお腹が痛いと言い始めた。作業中に突然うずくまりミカリーナの足元には水たまりができていた。


すぐに医者が連れてこられ、医務室に連れていかれた。


俺だけが付き添うことが許され、一緒にいった。


それから6時間後。赤ちゃんの鳴き声がした。


けたたましい鳴き声に驚きながらもその顔は俺に似ていた…


似ていたけど、、、まるで猿みたいだった。


自分の子どもは絶対に美形だと思っていたのに、、、猿みたいだった…


そしてなにより驚いたのが、子どもは女の子だった。


ミカリーナからお腹の中の子は侯爵家の跡継ぎと聞いていたから男だとばかり思っていたのに。


確かに男とも女とも言ってはいなかったが…



名前は『ルイーナ』と名付けられた。



作業場での子どもとの生活は楽ではなかった。

日中俺たちが作業している間は養護院で子どもを預かってくれるらしい。


しかし、作業が終わり、風呂に入るとルイーナが帰ってくる。

だが、ルイーナがいると食事もままならず、今度はミカリーナが癇癪を起こす。


俺の母はメイドの一人を乳母としていたらしく、あやし方すらわからないという。

キャロルは平民だったからどうにかできないのかと見ていると、素知らぬ顔をしてご飯を食べている。ようやく食事を終えて眠ってもルイーナが泣くので寝ていられない。

隣で泣いているのにミカリーナはあやそうともしない。


仕方なく、俺が抱っこするも居心地が悪いのかさらに大きな声で泣き出してしまう。

そうしているといつの間にか朝になってくる。


また養護院に預け、仕事から帰ってくるとルイーナが帰ってくる。



「ミカリーナ!いい加減ルイーナの面倒を見ろ!どうして泣き止ませない!」


「どうして私がしなければいけないの?ダレンが妊娠させてからこんなことになったのよ!私は10か月もお腹の中で育てて、痛い思いして生んだんだから今度はダレンが面倒見なさいよ!」



もういやだ!こんな生活いやだ!!!


夜ろくに眠れもしないのに、日中はいつもと変わらずに働き続けないといけないなんて!!!!!!




それを見かねた養護院から子どもはこちらで育てると申し出があった。


それを見てキャロルが

「ルイーナは私の宝よ。こんな場所は環境によくないから自分も養護院で一緒に暮らすわ」


そう言っているが通るわけがない。

子どもの様子を見ないのを確認して引き取ると言われていたので当たり前だ。


でも俺はそれにホッとした。

子どもが生まれてから夜もろくに眠れていない状態からやっと解放されると思うとホッとしたんだ。

子どもと会いたければ申請を出せば面会はできると言われた。


だが、誰もそんなことしなかった。


1年経っても、2年経っても……


俺たちに子どもはいなくなった。

いや、最初からいなかったのかもしれない。



6人で同じ部屋で暮らしているが、家族なんて気持ちもない。

こんな地獄へ突き落とした張本人だ。


なぜあの時愛しているだなんて思えたんだ…

可愛ければいいだなんて思えたんだ。

可愛くたって、思いやりもないし、頭もよくない。文句ばかりじゃないか…


あぁ、俺はどこで間違えたんだ?


どこからだったら素晴らしい未来へ進むことができたんだ……………

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