その3. 次の季節は、いつも雨が連れてくる

 ここで書くのは「その2」を書いている時に浮かんでいたことですが、そのまま続けてしまうと纏まりが悪いなと思って、二つに分けました。


 本土に住んだことがないので同じ様なものなのか分かりませんが、沖縄の季節の変わり目にはいつも雨が降っています。


 今現在、北半球は冬に向かって、日本ではその前に秋があるわけですが、沖縄はまだ夏です。しかし日暮れも早くなり、その時間帯には底が抜けたような豪雨が降る様になってきました。どれくらい凄い量なのかというと、ほんの二十分程度で、町に張り巡らされた排水溝が冠水する程です。それがここ二、三日続いています。


 それで季節を連れてくる雨の話です。九月といえば本土ではしとしととした雨ですが、沖縄はそれを積乱雲が連れてくるわけです。それが翌朝になると、昨日が嘘の様に晴れてしまいます。心なしかどこか涼しくなり、そろそろ秋でもやってくるのかなとふと思う様になります。でも海の向こうを見れば黒々とした雲が居座っていて、夕方には降りそうだって予感に晒されます。それを繰り返して秋を迎えて、冬が来ます。


 秋が連れてくる雨はしとしととしています。それが十月下旬から十一月上旬にかけてようやくやってきます。止むような止まないような小粒の雨が降り続いて、それが終わるとひんやりとした空気が地面から湧いてきます。きっと夏の間に蓄えられた潜熱が奪われていってるんでしょうね。


 そんな小雨を繰り返して、そのうち晴れて、冬がやってきたなと感じます。澄んだ空気が、水平線に佇む日の入りを一層引き立ててます。それにこの時期の日の出は格別だなぁと毎年思うので、冬を連れてくる雨は楽しみです(ふと思ったのですが、清少納言は「秋は夕暮れ、冬はつとめて」と書き記しました。そう考えると沖縄の冬は、本土の秋と冬の中間でしかないのかもしれません)。


 そして冬が連れてくる雨は、秋と似て小雨が降ります。まさに三寒四温という言葉の通りの移り変わりです。そろそろ去る大陸の寒気が三日程雨を降らせて、まだ片足しかやってきてない暖気が四日くらい晴れ渡らせる。そんな季節なので服選びに困ってしまいます(そんなこと関係なしに、年がら年中袖の長いものを着ていますが)。


 ただ「春」と呼ばれる季節は、沖縄ではおそらく二月上旬には終わってますし、「温」は「暑」です。二月には海に入れるので、ともすると春もないのかもしれません。ひょっとしたら秋と冬と、そして春が一緒にいるのかもしれませんね。ただ、一度でいいから桜に囲まれて卒業式か入学式を迎えたかったです。


 そんなことを書いていたら、土砂降りの豪雨が止んでました。部屋から外を見てみると、薄い雲の向こうに月が見えます。

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