第90話 羊
勇気を振り絞った体育倉庫での出来事は不発に終わってしまった。
それ以降、遠山くんとは距離ができてしまったような気がする。
いや、完全に私が避けてます。
というのも、あの時の私の行動を遠山くんを見ると思い出してしまい、羞恥心でまともに会話が出来ないのだ。
私だって普通に話したい。でも話せない。
私……一体どんな顔してたんだろ……。
とはいえ、いつまでも逃げてばかりいられないのもまた事実。
授業でグループワークになれば必然的に遠山くんと同じグループになってしまうし、授業開始の礼の時だって視界に入ってしまう。
ダメね、心が乱れてる。
シャキッとしなさい沖矢千聖。
こういう時はそう、山でも数えるとしましょう。
山が一つ……山が二つ……山が三つ……遠くに山が四つ……遠くに山が五つ……遠山くんが……
何を考えているの沖矢千聖!!!
こういう時はそうよ、季節を回せばいいんだわ。
春……夏……秋……冬……春……夏……秋……冬……春斗……
やっぱり遠山くんになっちゃうじゃない!
あぁもうどうしたら!!!
この日私は、全六時間の授業全てのノートを取り忘れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます