第89話 確証

「沖矢ちゃん、春斗のこと好きだよ」


 その夜。

 姉から言われた言葉が僕の頭から離れないまま僕は布団を被った。布団の中は考え事をする時にはうってつけだ。


 沖矢さんが……僕のことを好き。


 まだ姉から言われただけで、本人に言質は取っていない。だから違うという可能性は大いに有り得る。

 でも同じ、女性が言っているわけだし?その可能性はあると言っても過言では無いのでは……?


「いやいやいや!」


 僕は一人で呟く。

 姉が考えるほど沖矢さんは単純な人じゃない。

 確かに優しくしてもらってはいるが、それは果たして恋心だろうか?

 LOVEとLIKEでいえば、僕は犬塚くんと同じLIKEに入っているだけなんじゃないだろうか?


「ぐっ……」


 そう考えると姉の言葉を聞いてから半ば有頂天だった自分が恥ずかしい。なんて思い違いだ。

 これは一度誰かに相談しなくてはいけない案件のようだ。

 僕はそう思い立つとスマホを手に取り電話を掛ける。


『……どうした春斗』

「犬塚くん。沖矢さんが僕のことを好きってホント?」

『どうしてそれを……っ!じゃなくて、どうしてそう思ったんだ?』

「お姉ちゃんからそう言われた」

『お前のお姉ちゃんすげぇな』


 同感。

 犬塚くんは続ける。


『俺は知らないが、気になるなら本人に聞いてみたらどうだ?』

「そんなの聞けるわけない!」

『だろうな。でももしその通りならお前と沖矢は両想いだよな?』


 両想い。

 その言葉を聞くと胸の奥がむず痒い感覚に襲われる。


「で、でも、そうと決まったわけじゃ……!」

『そうだな、確かにそうだ。でも好きなんだろ?沖矢のことが』

「う、うん……」


 改めて言われるとちょっと恥ずかしいな……。


『というか聞きたかったんだけどさ、そもそもお前はどうして沖矢のことが好きなんだ?』

「あーそれは────」

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