第86話 悪くない

 私の好意に気付かれていると勘違いして、キス待ち顔までして、そして遠山くんに断られた。

 そのショックは非常に大きい。

 だけどそれ以上に、


「恥ずかしいっっっ!!!」

「いきなりどうした千聖」


 荒ぶる私に、共に帰っていた英梨々が冷静に話しかける。

 私は英梨々に今日あった出来事の一部始終を話す。

 私の話を聞き終えた英梨々は「それは」と呟き、


「遠山が悪いな!」

「やっぱりそうよね?!」


 やっぱりそうよ、遠山くんが悪い!私がこんなにもアピールしているのに一向に気付かないし、キス待ち顔までしたのにキスしてこないし!


「そうよね!私悪くないわよね?!」

「千聖は悪くない!ていうかさ、そもそも千聖はなんで遠山のことが好きなの?」

「えっ」


 なんで英梨々はそんなわかりきってることを聞くのだろう。

 私は英梨々の問いに答えるため、自らのスマホのフォルダを開ける。


「見て!」

「ん?……遠山がいっぱい」

「ね!可愛いでしょ!」

「は、はぁ……?」


 私のスマホの画面いっぱいに表示されている遠山くんの写真。

 犬塚くんのインスタや行事の時の写真、そして隠し撮りまで、その種類は多岐にわたる。


「だから好き!」

「全然わかんないし保存してるの普通に引いた」


 英梨々はまだお子様だから、私の気持ちが理解できないのかもしれないわ。


「おい、今失礼なこと思ったろ。てか、そういう事じゃなくて、好きになるきっかけを聞きたいんだわ」


 あぁそういうこと。


「それが覚えてないのよね……」

「は?なにそれ、いつの間にか好きになったわけ?」

「そーゆーこと」


 英梨々は「はぁ?よくそれでずっと想い続けられるね」と感心する。

 というか、そんなことはどうでもいいのよ!!!


「どうすれば遠山くんと付き合えるかな?!」

「そうね────」

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