第82話 こっち
シャワーを浴び終えた私はリビングに出る。
まだ洗濯物が終わるまでには時間が掛かりそうなので、遠山くんとテレビでも見ながら待つとしよう。
「遠山くん、なにか見たいのありますか?」
「いえ僕は……なんでもいいです」
リビングのソファに深く腰掛けながらリモコンを操作する私は、ダイニングテーブルのそばに置かれた椅子に腰掛けたままの遠山くんに声を掛ける。
「じゃあこれにしよーっと、遠山くんもこっちに来ませんか?」
私はポンポンとソファを叩く。
「いやいやダメでしょ!」
「いいですよ遠山くんなら」
「えっ」
私だって馬鹿じゃない。
遠山くんが私を襲うような人じゃないことくらい理解している。
ならばこその誘い!
シャワー浴びたばかりの私のそばでドギマギしてもらい、私を意識してもらうのだ!
「それってどういう……?」
「どうもこうもありませんよ。ただ単純にソファに座ってくださいと言ってるだけですよ?」
ふふ、動揺してらっしゃる。
可愛いじゃない。
「何か私の隣に来たくない理由でもあるんですか?」
「いや……そういうわけじゃ……!」
「なら」
私は再びポンポンとソファを叩いた。
すると、遠山くんはとうとう観念したのか、椅子から立ち上がって私の方に歩いてきた。
そしてゆっくりソファに腰を下ろす。
「「……」」
ここからどうしたらいいの……?
手を繋いでいいの?でも私たち恋人じゃないし……。
じゃあキス?そんなの尚更ダメに決まってるし……。
ここから先を考えてなかったぁ!
ま、幸せだからいっか……。
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