第78話 脱衣場

 私はなんてことを言ってしまったのだろうか……。

 経緯をおさらいすると、お母さんの勤め先の本屋にて偶然にも遠山くんと遭遇。そこからの帰り道、急な雨に降られ私はつい家へ招き入れてしまった。


「え、えーと……お邪魔します」

「どうぞ」


 びしょ濡れの私と遠山くん。

 幸い、私の方は悲惨な状態ではないが、遠山くんの服からは度々水滴が滴っている。


「シャワーで大丈夫ですか?」

「いやいや!少し雨宿りさせてもらうだけでいいんで!」

「風邪引いてほしくないんです。入ってください」

「は、はい……」


 私は遠山くんに「お風呂はここです。洗濯物は洗っておきますからその籠に入れて置いてください」と伝え脱衣場を出てドアを閉める。

 なにより、一刻も早く一人になって、どうにか心を落ち着かせないといけない。


 というか、今この状況はいけないのでは?

 お母さんはいないし、当然お父さんも不在。今この家には私一人なのだ……。もし遠山くんが襲ってきたりしたら、それを止める人は誰もいない。

 そんなことをする人ではないと思ってるが、動悸が収まらない。


 私が襲ってしまいそうじゃない!


 私はドアに背中を預けたまま体育座りをし膝に顔を埋める。


「はあぁ……好き」

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