第44話 姉さん
一学期が終わり、夏休みの宿題に励んでいたある日。
「はるとー!お姉さんのご帰宅だぞー!」
玄関から二階の僕の部屋まで届くほどの音量で
どうやら姉さんが帰ってきたらしい。
すると数秒のうちに僕の部屋の扉を開け放つ。
「ただいま!」
「……おかえり」
僕の姉は校内では美人と有名で、肩くらいに整えられた髪に、整った顔立ちをしている。むしろ知らない方がいないだろうというくらいだ。おかげで僕の肩身は狭くて仕方がない。
「そういえば今日あの子に会ったよ」
「あの子?」
「うん。なんだっけ……おきやさん?」
「ちょ!」
なんてことだ。姉さんと沖矢さんが遭遇してしまうなんて。
姉さんは「いやー!私のことを可愛いって言ってくれてさ!ほんといい子だったよー!あはは」なんて言っているが、立てば芍薬座れば牡丹歩いてしまうと恥さらしな姉さんに沖矢さんは引いていることだろう。
「確か春斗と同学年だよね沖矢さん。春斗、付き合っちゃいなよ!」
「姉さん、それは出来ないんだよ」
姉さんの言葉に俺はきっぱりと断る。
確かに同学年、確かに同クラス。
だけど、
「告白なんて怖くて出来るはずがないじゃないか」
「キメ顔で言うことじゃないからね?……あれ、てことは……」
「あ……!」
すぐに僕は己が犯した失態に気付くが時すでに遅し。
「ふーんそういうこと」
「……」
なんでこう女の子はみんな恋バナが好きなんだろう。放っておいてほしいものだが。
「それならお姉ちゃんに任せなさい!恋愛のいろはを教えこんであげるから!」
もう、不安しかない!
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