第42話 心待ち

 期末テスト目前のある日の昼休み。


「遠山と犬。海と川、行くならどっち?」

「犬って呼ぶなし。……川だな」

「僕はどっちでもいいかな」


 唐突にそんなことを聞いてきた柏木さん。

 僕達の返答を聞いた柏木さんは「おっけー」と明るげに言うと沖矢さんの元へと戻っていった。


「ねえ、今の話って……」

「間違いなく夏休みの予定だろうな」


 やったぁぁぁぁぁあ!!!

 柏木さんから話を振ってきたということは、十中八九、柏木さんも同行するだろうし、柏木さん一人になるということはないだろう。つまり沖矢さんも来る可能性が高い!


「やったな春斗」

「そうだね……あ」

「ん?どうした?」


 僕は大変なことに気付いてしまった。いや、思い出したと言うべきか。


「いや……なんでもない……」


 ……言えない。実はカナヅチだなんて……。

 幼少期からまともに泳いだことなんてないし、小学校の水泳の授業は先生の補助なしでは泳げなかった。それではダメだと中学に入ってから泳げるよう必死に練習するも、そのかい虚しく上達しなかっただなんて……口が裂けても言えない。


「まあいいや!楽しみだな!」

「う、うん……」


 当日までにはクロールくらいはできるようになっておこう……。

 僕はそう決意した。

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