第41話 宣戦布告

 6月末。私は隣の席の遠山くんに向けて高らかに宣言した。


「今回のテスト、私が勝ちます!」

「へ?」


 前回の中間テストでは不覚をとったが、今回の期末テストはそうはいかない。前回よりも入念に事前準備もし、テスト対策は過去に類を見ないほどしてきたつもりだ。

 いつまでも遠山くんの一つ下の私じゃないぞっ!


「前回のようにはいきません!私が勝ちます!」

「え、あ、うん……頑張って……?」


 突然の私の宣言に、状況を読み込めていないらしい遠山くん。

 ふふ、まさに盤外戦術である。

 ここで混乱させておいて、勉強に少しでも遅れを生じさせる作戦。


「ワタシカツ・トオヤマクンマケル・カワイソウ」

「あの……どちら様……?」


 良い感じに効いてるじゃない。

 そしてここでトドメの一発!


「遠山くん、私と賭けをしませんか?」

「……賭け?」


 遠山くんの返事に私は「はい」と頷く。


「勝った方が何でも言うことを聞いてもらえる。もちろん、公序良俗に反しない範囲で。……どうですか?」

「いいよ、受けて立つ」


 遠山くんは少しの沈黙の後そう言った。

 あれ待って……。

 私の想定では「か、賭け?!賭けなんてできないよ!」という反応を無理矢理押し通し、ここでも盤外戦術を使うつもりだったのだけれど……。

 そこまで思考して私は気づいた。


 ……私、逆に遠山くんに火を付けてしまったのでは?!

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