第37話 調理実習

 今日は家庭科の調理実習です。

 教室から家庭科室に移動し、エプロンとナプキン、マスクを備える。

 四人一組に班分けされ、それぞれ役割分担をする。


「よろしくお願いしますね、遠山くん」

「よ、よろしく」


 神様、ありがとう。

 僕は沖矢さんと軽く挨拶を交わしつつ、心の中でガッツポーズを決める。

 最近の僕はついているんじゃないかと思う。


「遠山くんは料理得意なんですか?」


 沖矢さんが下ごしらえをしながら僕に聞いてきた。

 ここはなんて答えるのが正解なんだろう……。

 もしここで「料理得意だよ!」と言った上で失敗したら「猿も木から落ちるって言いますもんね(笑)」と言われてしまうかもしれない。

 逆に「料理はそんなに得意じゃない……」と言った上で上手に出来てしまったら「遠山くんは私に嘘をつくんですね」と言われてしまうのでは?

 ここは安全策を取ろう。


「そ、そこそこ……かな」


 よし、いい感じに逃げられた。


「そこそこですか……」

「うん、そこそこ」

「…………」

「…………」


 会話終わっちゃったな……。

 もっと言うことないの僕?!こういうところで沖矢さんと距離を縮めるべきなのに!

 今度は僕から話を振ろう。


「お、沖矢さんは料理するの?」

「私……私も、そこそこですね」

「そこそこなんだ……」

「はい、そこそこ……」


 会話終わっちゃったな……。

 その後も特に沖矢さんとの会話が盛り上がることは無かった。

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