第36話 心理テスト②
ある日の放課後、犬塚くんが私と英梨々、そして遠山くんを集め心理テストを始めた。
そして遠山くんの結果が言い渡される。
「それで最後、春斗は恋人に『優しさ』を求めている。春斗がつらいときにはなぐさめ、励ましてくれるような恋人が理想的。さらに、記念日に花束をプレゼントしてくれるようなロマンティックな相手なら最高だってさ」
まさに私のことじゃないこれ!
修学旅行で体調の優れなかった遠山くんを看病し、記念日だってもちろんメモるタイプの人間で、メモ帳を開けばすぐにでも『遠山くんと手が触れた日』という消しゴムを拾った日が記されているページを開ける。
私以外の何者でもないわけこれは!……ってことは遠山くんは私のことが好きってことなんじゃ……?
「あれれ〜ど〜したの千聖〜」
「英梨々うるさいっ!」
私の顔が赤くなっているに気付いた英梨々が私をいじってくる。
こればかりはなんの反論のしようも無いので、無下に扱うしかない。
「じゃあ次の心理テスト。じゃあみんな1〜10の中から好きな数字を選んで」
数字ということは名指し系じゃないし、個人を特定するものではないのかしら?さっきのバニラアイスと似て、好みの傾向といったところかしら。
ならば、
「私は6。なんとなくだけど……」
特に理由もなく言ってみる。
まあ、心理テストとはそもそも考えるものではなく本能に従うもののような気もするのでこれでいい。
「じゃあ僕は7で」
「私は10〜」
続いて遠山くんと英梨々が言う。
犬塚くんは全員の意見を確認すると、
「このテストでわかるのは運命の人の名前の中に入る漢字でした!」
え、ちょ……!
待って、そんなの聞いてない!
それでもし遠山くんの名前にある漢字なんて言われたら、好意がバレる可能性がある!そんなの恥ずかしい!
「まず柏木、柏木は……『金』が名前に入ってる人だってさ」
「さっきのやつといい今回といい、あんまいいイメージないな」
「続いて春斗、春斗は……『中』が名前に入ってる人だって」
「へー」
中……?私の名前は沖矢千聖だから『中』なんて入ってないけど。
壊れてるんじゃないの?その心理テスト。
「それで最後は沖矢な、沖矢は……『山』だってさ」
「だってさ千聖」
山……山……遠山ぁぁぁぁぁぁあ!!!
ダメダメダメダメ!ノーカン!ノーカン!No!No!No!
英梨々が反応したから何かあると思ったけど、遠山くんじゃない!てかしっかり漢字が入ってるじゃない!
「ま、言っても単なるテストだから、あてにすんなよ」
犬塚くんは私の反応に呆れたように言うと、心理テストの本をカバンにしまった。
「おし、帰ろーぜ春斗」
「う、うん。じゃあね二人とも」
そう言って教室を出て行った男子二人。
明日から遠山くんにどういう顔を向ければいいのよ……。
そしてふと気付いた。
私の『沖』に『中』って漢字あるじゃない。
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