第34話 作戦会議③

 とある休日。私は英梨々の家に呼び出された。

 玄関を開けられ、今ではもう顔馴染みの英梨々の母親に会釈し、英梨々の部屋へと通される。

 中は八畳ほどの広さで、白とピンクで統一されていて、ふかふかのベッドにクッション、ローテーブルが配置されている。英梨々はそのローテーブルのそばに正座すると、私を正面に座らせて言った。


「今日呼んだのは他でもない。恋愛作戦会議ッッッ!」

「れん……あい…………作戦会議……?」


 果たして作戦を会議するほどの恋愛を誰がしているのだと言うのか。


「誰の?」

「千聖以外の誰なのさ」


 あ、私なのね。

 でも待って……


「私の恋愛は順調よ?」

「何をもって順調と言ってんの?進展ゼロの間違いでしょ」

「そうかな?」


 いまいち英梨々の言葉にピンと来ない私。

 だって、消しゴム渡したし、保健室連れ添ったし、修学旅行では一緒に行動までしたのよ?どこが順調じゃないと言うのよ。


「なんっっっにも順調じゃないから!」

「そうなの?まぁいいけど……それで、作戦会議って何よ」

「もちろん、あんたら二人をくっつけるための作戦会議」

「ほ、ほう……」


 私は少し前のめりになる。


「まずは意思確認よ。千聖は遠山とどうなりたいの?」


 私が……遠山くんと……。そりゃもちろん。


「同じお墓に入りたい」

「飛躍しすぎじゃボケ」


 あれ?私変なこと言った?!


「甘々ちゃんね英梨々。とりあえず、付き合うにしようかしら」

「私のどこをどう見て甘々と行ってんのか聞きたいけど……。それじゃあ目標を付き合うにセッティングするじゃん?じゃあそのためにはどうすればいいのか。千聖わかる?」


 遠山くんと付き合うためにはどうすればいいのか……。そりゃもちろん。


「結納」

「だから飛躍しすぎじゃボケ!」


 また英梨々にツッコまれてしまった。

 一体私のどこが飛躍しすぎなのかしら。

 これだから恋愛初心者は。


「今すごい失礼なこと思ったろ」

「お、思ってない……。じゃあいいわよ、そうね……二人で出掛けるとか?」

「なんで最初からそれを言えないの?」


 そんな事言われても……。


「じゃあ、二人で出掛けるためにはどうするか」

「そりゃもちろん、仲良くなる」

「言えるじゃん」


 当たり前じゃない。

 私にだってそれくらいわかるわ。


「じゃあ仲良くなるためには?」

「遠山くんのお母さんに挨拶に行く」

「だから飛躍しすぎだっつっっってんだろぉぉぉお!!!」

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