第25話 作戦会議①

 二日目の自由行動が終わり、ホテルに戻った僕達は、夕食までの時間を部屋で過ごすことになった。


「なあ、修学旅行といったら恋バナだよな?」

「そうかな?トランプとかじゃない?あるよ!トランプ!ババ抜きしよう!」

「いやいや、ババ抜きなんて二人で楽しめる競技じゃねぇだろ。そんなことより、だ」

「?」


 犬塚くんは自分のベッドに腰を掛けると、何かを企んでいるような怪しい表情をする。

 ちなみに、この部屋はバス、トイレ別で、キッチンはなく給湯器のみ。壁際に設置されたテレビと向かい合う位置に人数分のベッドが置かれている。


「恋バナしよーぜ!」

「え、えー……」


 乗り気じゃない僕。

 正確には、犬塚くんの恋愛事情は聞きたいが、自分のは話したくない。

 だって恋バナという恋バナが出来ないじゃないか。

 ここはとりあえず、どんなことを言えばいいのか手本を見せてもらおう。


「それじゃあまず、犬塚くんからいいよ」

「え、俺いないけど?」


 ……いないけど?


「じゃあ次春斗な!」

「いやいや!待って!え、いないの?」

「おう」

「あー……」


 あ、この目は嘘偽り無い目だ。

 でも僕だけ言うなんて公平じゃないよね?


「ぼ、僕もいないかなー」

「お前は沖矢だろ」

「えっ」


 なんで知ってんの?!エスパー?!


「それで、どうなんだ?進展は。今日二人で行動したろ」


 あー、あれは犬塚くんが仕込んだ事だったのか。

 僕はそんなこととはつゆ知らず……


「コイに餌やって終わりました」

「……は?」


 犬塚くんは、何かを察してかこれ以上追及してこなかった。


 僕だってもっと話したかったよ!!!


 でも緊張してしょうがなかったんだよ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る