第24話 コイ

 私が英梨々から与えられた時間は三十分。

 その間だけは、犬塚くんから遠山くんに連絡がいかないよう、英梨々が振り回すつもりらしい。

 修学旅行を私欲のために利用するのは少々気が引けるが、英梨々に協力してもらった以上、今更ひきさがるわけにはいかない。

 私は遠山くんを駅からほど近い公園へと連れてきた。


「見てください遠山くん!あそこで仮装してる人達が観光客を楽しませてますよ!そういう趣味なのでしょうか?!」

「仮装イベントらしいよ」


 ……会話終わっちゃった。

 ダメダメ!しゃきっとしなさい沖矢千聖!

 私は気を取り直して辺りを見回す。


「……見てください遠山くん!コンクリの上をミニ汽車が走ってますよ!私初めて見ました!」

「僕は何回か見たことあるよ」


 ……会話終わっちゃった。

 なぜかさっきから上手く会話を広げられない。

 いやいや確かに広げづらい話題だったかもしれない。もっと取っ付きやすい話題にしよう。


「あ!池がありますよ!なにか生き物いますかね?行きましょう!」

「え、ちょ……!」


 池を見つけた私は遠山くんの手を取り、池のそばまで連れていく。


「見てください!コイが沢山!」

「本当だ」

「あ、餌やりできるみたいですよ、やりませんか?」

「うん、やろう」


 私達は池に併設された餌売り場に行き、二百円でコイの餌を買った。

 再び元の位置に戻り、池に餌を放り込む。


「うわっ?!すごい来ますね!」

「ほんとだ!どれだけお腹空いてんだろ!」

「気になりますねっ!」


 バグバグバグバクッッッ!と餌欲しさに水面から口を出す大量のコイ。

 私はそんなコイに夢中になっている彼の横顔を見て、


「────っ//」


 自分の恋を認識するのだった。

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