第22話 観光
「おっしゃいくぞー!」
修学旅行二日目、今日は班行動の日。
犬塚くんはホテルを出ると拳を空高く突き出した。
「……朝から元気そうですね犬塚くん」
「……本当にね……ふぁあ……」
私の隣にいる遠山くんは眠たそうに欠伸をする。
まあ確かに、犬塚くんのテンションだと夜遅くまで遊び呆け、朝早くに起こされたのだろう。
朝弱いんだ遠山くん……可愛い。
今日のスケジュールは、まずは大阪城へ行き、その後道頓堀行くというプラン。途中、適当に昼食や観光をするつもりではいるけれど、大雑把に言うとかんな感じ。
私達はホテルから歩き、北新地駅に到着するとJR東西線京田辺行に乗り込み、二駅行ったところにある大阪城北詰で降りる。そこから二十五分歩くと、本来なら大阪城公園に辿り着くのだが……
「みんな……ごめん…………先行ってて……」
前日までの疲れのせいで、早々にノックダウンした遠山くんは改札を出てすぐのベンチに腰掛けるとそう言った。
弱ってる遠山くんも……可愛い。
すると英梨々が、
「じゃあ私と犬塚が先に行ってるから、千聖は残って遠山とゆっくり来て」
「「えっ?」」
英梨々が言い出したことに私と犬塚くんが仰天する。
ちょっとまって、その提案は嬉しい!とても嬉しいんだけど!不自然すぎない?
「待て待て、残るなら普通男子の俺だろ?」
どうやら私と同じ思考をしたらしい犬塚くんが
言ってることは正しいんだけど!正しいんだけどさ!
「何言ってんの。あんたが残ったら遠山がもっと疲れるだけでしょ」
「ぐっ……」
やっぱり思い当たる節があるんだ……。
「というわけで千聖、あとはよろしくー!」
「え、う、うん……?」
英梨々はそう言うと、若干抵抗する犬塚くんを無理矢理引っ張っていく。
私は二人に手を振りながら、目線を疲れ果てた遠山くんに落とす。
こ、これは……!
もしかしなくても神様が私の味方をしている?!
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