第18話 秘密

 遠山くんが目の前に座っている修学旅行の行き新幹線の中。

 英梨々には悪いけど、私はこのまま外を眺めている遠山くんを見ていたいので、あなた達の会話には入らないわ。

 彼の横顔をもっとちゃんと見たいのだけれど、あんまり凝視し過ぎると気付かれてしまうから、チラチラと様子見をするくらいしかできない。


「千聖、見すぎ見すぎ」


 と英梨々が私の耳元で囁いた。


「え、そう?」


 私はてっきり気づかれてないと思っていたのだが、英梨々は私の問いに頷く。

 うわぁあ!!!恥ずかしい!!!沖矢千聖、一生の不覚!


「遠山くんにはバレてないよね?」

「た、多分。でも……」

「でも……?」


 英梨々は視線をチラチラと犬塚くんに向ける。

 まさか……。


「間違いなく気付いてる」


 なんということでしょう。

 遠山くんの親友の犬塚くんにバレてるなんて……!

 これは早急に口封じをしなければいけないわ。


「犬塚くん、ちょっと」

「ん?あぁ……」


 私は犬塚くんを車両と車両を繋ぐ場所へと呼び出した。

 そして、


「遠山くんには言わないでくださいっ!」

「え?」


 いやもうね、お願いするしかないよ。

 手荒な真似をするわけにもいかない。

 一時的に大きな衝撃を与えれば、それ以前の数分の記憶が消える可能性があるとは聞いたことがあるけど、そんな強い衝撃なんて容易に用意はできない。


「あぁ……やっぱりか」

「や、やっぱりって?!」

「いや普通に見てたらわかるぞ?春斗が鈍感過ぎるだけだ。悪いが俺は人の色恋沙汰には口を出さない主義だから助言も告げ口もしないが、応援だけはしとく」


 犬塚くんはそれだけ言うと「もう帰っていいか?」と私に問う。私は「う、うん……」と返し、共に席に戻った。

 犬塚くんって案外いい人なんだ、知らなかった。

 というか、そんなことより!


 もしかして私、バレバレなのぉぉぉお?!?!?!

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