第17話 席順

 6月上旬。

 東京駅に集合した僕ら。その目的はただ一つ、修学旅行だ。


「はーい!クラスごとに列になって並んでー!」


 学年主任の先生がそう言ってクラスごとに列を並ばせる。

 この後簡易的な出発式を行い、新幹線に乗るというプランだ。

 しかし問題がある。なんと新幹線の席は班ごとで区切られており、明確にどこどこに座れ、という指示がない。


 つまり、沖矢さんの隣になれる可能性がある!


 新幹線での移動は約三時間ほど。

 その間、沖矢さんと談笑することが出来れば、仲良くなれる!

 出発式が行われ、東海道新幹線のホームへの移動が始まった。

 いや待てよ?ここでもし「沖矢さん!隣の席になりませんか?」と言おうものなら、それはもう告白同然。好意を伝えてるのと同じだ。


 ……もしそれがバレて距離を置かれたら……?


 この修学旅行が寂しいなんてもんじゃなくなってしまう!

 ダメだ!ここは素直に犬塚くんの隣に座ろう!

 班行動を共に出来るだけで十分僕にとっては幸せだ。そう、これ以上欲しがっちゃいけない。

 僕らは新幹線に乗車する。先生の指示で各々の班の区画の頭上の荷物置きに荷物を置き、僕は通路側の席に座る。僕と犬塚くんが前席で、その一列後ろが沖矢さんと柏木さんだ。

 すると、


「ねぇねぇ席回転するっしょ?向かい合わせない?」


 後ろから身を乗り出しながら柏木さんが言ってきた。

 こ、これは……!


「いいぞ。春斗、ちょっとどいてくれ」

「う、うん」


 こ、これはぁぁぁあ!!!


「これでよしっ!」


 やったぁぁぁぁあ!

 通路側だった僕の席は、回転したことによって窓側となり、


 沖矢さんの正面の席になった。

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