第16話 胸踊る

 うぅ……遠山くんと同じ班になりたい。

 放課後の時間、各々が男女でグループを構築する中、私はただ縮こまって遠山くんが声を掛けてくれるのを待つしか無かった。


「そんなに悩むなら自分から声掛ければいいじゃん」

「それはダメなの!」


 私にそう言ってきたのは英梨々。私は即座に否定する。

 柏木英梨々は私の友人で、小学校から同じ学校に通う仲だ。肩くらいまである黒髪。そして頭の右側に付けた髪留めがチャームポイントの女の子。背は私と同じくらい。


「なんだって遠山なのさ。千聖ならもっといい男選べるよ?」

「いいの!私はその……遠山くんが……いいの」

「そこまで言えるんならいきなさいよ」

「うぅ……」


 だって……だって……!


「は、恥ずかしい……」

「千聖のその顔頂きだわ。よし、それに免じて私が行ってこよう」

「え?いいの?」


 英梨々がそう言うなんて、私は今一体どんな顔をしていたのだろう。

 すると英梨々は遠山くんと犬塚くんのペアに近づいていく。こういう所でちゃんとコミュニケーションを取れる所は尊敬する。

 話し終わったらしく、彼らは一人待つ私の方を見ると、こちらに歩み寄ってきた。


「それじゃあ……よろしくね、沖矢さん」

「よろしく沖矢!」


 遠山くんと犬塚くんが私にそう言ってきたので、私は、


「うん、よろしく」


 今回の修学旅行に胸を躍らせた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る