第13話 似顔絵

 今日は美術の授業がある。


「それでは……男女ペアになって、お互いの似顔絵を書いてください」


 美術室全体に聞こえるよう、大きな声で話す美術の先生。

 しかしこれは困ったぞ……。普段沖矢さん以外の女子とあまり交流のない僕は、男女ペアで沖矢さん以外の人となってしまったら、互いに無言というカオスな空間が出来上がってしまう。

 ここは何としても沖矢さんを誘わねば……!

 僕は教室を見回し、沖矢さんを発見する。


「お、沖矢さ……」


 僕が最後まで言うより早く、沖矢さんに話しかけた他の男子がいた。

 彼の名前は渋田英二しぶた えいじ。クラスでも一目置かれるイケメンだ。

 そんなイケメンに話しかれられたら断らないよね、沖矢さんも……。

 仕方ない、他にあてを探そう。


 僕は「はぁ……」と小さくため息をつきながら、少しでも会話をしたことがある女子を探す。

 そろそろ皆出来始めてる頃だ。早くしないと……!

 その時、



「遠山くん……!ペアの人は決まってますか?」

「えっ……?」


 僕は背後から声を掛けられ、声の主へと振り返る。

 そこには沖矢さんがいた。

 え、なんで……?


「決まってないけど……?」

「……! なら私と組みませんか?!」

「え、でも……沖矢さんは渋田くんと組んだんじゃ……?」


「誘われましたけど、断っちゃいました」


 そんな!渋田くんからの誘いを断ってまで……!

 そんなに僕が一人でいるのが可哀想だったのか……。なんて優しいんだ沖矢さん!


「それじゃあ、よろしくお願いしますね」


 とはいえ、沖矢さんが可愛すぎて顔を見れる気がしない。

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