第12話 散歩

 まさか遠山くんに会えるなんてぇぇぇぇ!!!

 今度から散歩コースは、少し遠いがここにしようそうしよう。

 私は遠山くんと別れた後、ハルに引き連れられながら思考を巡らせる。

 それにしてもハルがこんなにも懐くなんて……。やっぱり飼い主に似るのかしら?


 というか、遠山くんはなんでも似合うのね。

 さっきの遠山くんの服装は、オールブラックの服装に蛍光色のピンクが見事にマッチしていたし、半袖だったのもあって、ランニングウェアから伸びる遠山くんの綺麗な腕がはっきりと見えた。


「はぁ……ん?」


 ふと私がため息をつくと、林の中に人がいるのに気がつく。

 何をしてるんだろう……?

 季節は五月。カブトムシの餌を設置するにはまだ早いんじゃないかな?と、そんなことを考えていた私は、興味本位で林に近づいてみた。


「ん……あ!」


 なんと林の中には二人の男女がいた。

 二人は体を寄せ合い、女性の方は少し背伸びをして……、


 キスをしていた。


「……//」


 私は思わずその光景から目を逸らしてしまう。いやこの反応は正しいはず。そもそも人様のキスを覗き見するなどあってはならないのだ。

 というか、恋人同士って本当にキスするんだ……。漫画の中の話だと思ってたよ……。


 てことは、私もいつかするのかな……。


 なんて思いながら私は己の人差し指をそっと唇にあてる。

 いつか……遠山くんと……キス……。


「ダメダメ……!」


 私は正気に戻り邪念を振り払うと、「行くよハル」と言いながら駆け足でその場を後にした。

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