第11話 ジョギング

 とある休日の朝、近所の公園でジョギングをしていた僕は、


「お、沖矢さん?!」

「え……!と、遠山くん?!」


 犬を引き連れた沖矢さんに出会った。

 別に用があるわけでもないのに自然と立ち止まってしまった僕。

 それにしても沖矢さんは可愛いなぁ……。沖矢さんの格好は桃色のTシャツに同色のスポーツパーカー、それに黒に桃色のラインが入ったハーフパンツにタイツといった組み合わせだ。

 恐らく犬の散歩なんだろう。しかしせっかく会えたのに「それじゃあ……」で別れるなんて勿体ない。ここは少しでも会話をするべき!と本能が訴えかけている。


「……お、沖矢さん犬飼ってたんだね。犬種は何なの?」

「ええ、犬種は確か…… アイリッシュ・ソフトコーテッド・ウィートン・テリアですね」


 あい……?そふ……?てりあ……?

 長すぎて分からなかった。そんなに長い名前の犬種があるんだ……。

 すると今度は沖矢さんが話を振ってきた。


「遠山くんは散歩ですか?」

「あ、うん。たまに走ってるんだ」

「そうなんですね!私も時々この公園使うんですよ」

「そうなんだ……!」


 よし、今度から毎回ここでジョギングしよう。


「それじゃあ私はこれで……」

「あ、うん……またね」

「はいまた……」


 沖矢さんはそう言うと犬を引いて立ち去ろうとすると、沖矢さんの犬が僕に吠えた。


「ワンワンッ!」

「ちょっと!ハル!……はぁ」


 沖矢さんはリードを引っ張るものの、必死に抵抗するハルに観念し、ため息をつきながら引くのをやめた。

 それを見た僕はかがみ込むと、


「ハルって言うんだね。僕の名前とそっくりだ」

「……!」


 そう言ってハルを優しく撫でた。


「おかしいなぁ、この子、いつもはこんなにすぐ懐かないのに……」

「あはは、何か気に入られることがあったのかな?」


 僕はハルを撫で終えると立ち上がり「それじゃあね」と言って沖矢さんに背を向け走り出した。

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