第14話 薔薇

 遠山くんとペアになれた!やったー!

 私はその事を事情を知る友達、柏木英梨々かしわぎ えりりに話し、適当に流されると、遠山くんの正面に座りキャンパスを広げた。

 うぅ……こんなに真っ直ぐ遠山くんを見つめるなんて恥ずかしい……!

 私はチラッと遠山くんの方を見る。


「「っ!!!」」


 偶然遠山くんも私を見たので目が合ってしまった。

 恥ずかしすぎる!

 ダメだ見れない!もう遠山くんを見ずに想像で描くしかない!


「ッッッ!」


 私は筆を走らせ、勢いよく描く。

 そしてわずか五分足らずで完成してしまった。個人的にはこれで満足だけれど、ここは客観性を入れるため、英梨々に頼みましょう。

 というわけで、英梨々を引っ張ってきた。英梨々は「ふーむ」と暫く考えると、


「ねぇ、まず気になったんだけど、この薔薇何?」

「薔薇なんてあるわけないじゃない英梨々」

「いやここにある」


 何を言っているのだろう。私は遠山くんを思うがままに描いたのだから薔薇なんてあるわけが…………あるッ!

 何故か遠山くんの背景には薔薇が描かれている。

 なんで?!どうして?!どこから薔薇が来たの?!


「それとさ……何この茎みたいなの」

「何言ってるの英梨々、茎なんて描くわけないじゃない」

「いやここに……薔薇の茎というかツタというか」


 何を言っているのだろう。確かにさっきは薔薇が背景に描かれていたが、ありもしない薔薇の茎を描くほど私は浮かれてなどいない…………いやあるッ!

 遠山くんの上半身だけ描かれたキャンパスの下の方には、何故か薔薇の茎が広がっている。

 なんで?!どうして?!どこから薔薇の茎が広がってきたの?!


「ちさと、浮かれすぎ」

「……はい」


 その後私は、遠山くんを消さないように気を配りながら薔薇や茎を修正するのに二十分近くかけてしまった。


 遠山くんの描いた私は、それはそれはよく出来ていた。

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