第9話 巾着結び
「あの……遠山くん。これ……」
週明けの朝、学校に登校した僕が席に着くと沖矢さんが手のひらサイズの包装された物を差し出してきた。
「え、僕に……?」
何を言っているんだ僕は。僕の名前を呼んで差し出してきたのだから僕宛のものに決まって……いや、実はそんな甘い話ではないかもしれない。
もしかすると「遠山くん。これを犬塚くんに渡してくれないかな?仲良いでしょ?」というパターンかもしれない。
「うん、遠山くんに……」
この流れはもしかしなくても僕宛なのかもしれない。
どうしよう、嬉しすぎる!まさか沖矢さんからこういうのを貰える日が来るなんて!
「開けていい?」
「う、うん」
僕は沖矢さんから承諾を得ると、巾着結びの紐を解いていく。
重さと袋の大きさからおおよその予想はしていたが、包装された物の中身はクッキーだ。
僕は三枚あるうちの一枚をつまみとると、サクッと歯でクッキーを割った。
「っ!」
沖矢さんがクッキーを食べた僕を見つめる。
正直言って、緊張とか興奮とかで具体的な味はさっぱりわからないけど……。
「うん、美味しい!」
これだけははっきりとわかった。
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