第8話 お菓子

 遠山くんと別れた私は、お母さんから頼まれた買い物をしながら心の中で叫んだ。


 私のばかぁ!!!


 なんでもっとオシャレして来なかったのよ!というか、屋内なんだからキャップは取りなさいよ私!

 それとは別にもう一つ私には叫びたいことがあった。


 なんでお菓子作りが趣味、みたいなこと言っちゃったの私?!


 生まれてこの方、まともにお菓子作りなんてしたことないし、唯一あるとすれば幼少期に母と作ったフルーチェくらいだ。そもそもフルーチェはお菓子作りと言えるのだろうか?

 そもそも私が買いに来たのは漫画なのだ。というのも、幼少期に少女漫画なるものに出会ってから、まさに取り憑かれたかのように少女漫画の虜になってしまっているのだ。


 そもそもなんで嘘つくのよ!バレたら終わりじゃない!

 そうだわ、今からでも訂正して……ってお菓子作りから漫画って方向転換が急過ぎるし、嘘ついたことに変わりはないじゃない。


「ぐっ……」


 私は血の涙を流しながら小麦粉の売っているコーナーへと足を運ぶことにした。

 漫画はいつでも買えるが、お菓子作りは今しか出来ない。


 お母さんからお菓子作りを教わろう……。


 私はそう心に誓うのだった。

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