第7話 暇つぶし

「あれ、遠山くん?」

「……?お、沖矢さん」


 捻挫してから数週間経った週末のある日。

 僕は二駅隣にあるショッピングモールに来ていた。とはいえ、これといった用はなく、家にいても暇だから暇潰しに来ただけである。

 沖矢さんに会うとわかっていたらもっと着飾ったのに……!


 僕の今の格好は、無地Tシャツの上に濃い緑のロング丈のTシャツ。それに黒のスキニーパンツにシューズというとてもラフな格好。

 それに対し沖矢さんは黒の半袖Tシャツにブラウンのロングスカート。それに白キャップという可愛らしい格好。


「ぐ、偶然ですね……!よく来るんですか?」


 どれくらい沈黙していたかわからないが、沖矢さんが僕に気を使って話しかけてきてくれた。


「今日はたまたま……。暇だったから……」


 暇だったとか言わなくてもいいんじゃないかと思うんだけど!

 もっと上手に回って僕の舌!


「そうですか……たまたま」

「そう言えば沖矢さんはどうしてここに?」


 良し、上手く言えたぞ!今のは自然な流れで言えたんじゃないかな!

 沖矢さんは僕の問いに「えーっと……」と言うと、


「母から買い物を頼まれて……。それと自分の買い物も……お菓子作りの材料とか!」

「沖矢さんお菓子作るんですか?!凄いじゃないですか」

「いえ……!そんなこと……!」

「もし……」


 おっと危ない!「もしよければ買い物手伝いましょうか?」と口走る所だった。流石にそれはいけないな……。


「……じゃあ僕はあっちなので……」

「あ、はい……じゃあまた学校で」

「はい……また」


 僕は沖矢さんに背を向けて振り向くことなく帰路につくことにした。

 今度からは毎回オシャレして外出よう。

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