第3話 バスケ

「おい春斗、女子見に来てるぞ!」


 体育の授業中、クラスメイトの犬塚くんが僕の耳元でそう言ってきたので、体育館の入口の方をみると、確かにクラスの女子達がこちらを窺っている。

 その中には当然沖矢さんの姿があった。


「いい所見せようぜ」


 と僕の肩をポンっと叩く犬塚くん。僕も「よしっ」と気合を入れる。

 授業内容はバスケの試合で、クラス内で四チームに分かれてのリーグ戦だ。……とはいえ、僕は別段運動神経が良いわけじゃないから沖矢さんに良い所は見せられないだろうけど……。せめて格好悪いプレイだけはしないようにしよう。

 なんて考えていたら、僕のチームが試合の番になった。


「それでは開始────!」


 体育教師がバスケボールを宙に投げ、僕のチームのバスケ部の人がジャンプする。ボールを取ったのは僕のチーム。

 ボールを受け取った僕はドリブルして駆け出し────


 ポキッ。


「────ッッッ!」


 足がありえない方向へ曲がった。


「お、おい!大丈夫か春斗!」

「おーい遠山ー!大丈夫かー!誰か保健委員、遠山を保健室へ!」

「男子の保健委員は今日休みです!」

「じゃあ女子の保健委員は!」


 犬塚が駆け寄ってきて、現場を見た体育教師が保健委員を呼び掛けるが、あいにく今日、男子の保健委員は休みらしい。

 すると体育教師は女子の保健委員を呼んだ。確か女子の保健委員は……


「私ですっ!」


 沖矢さんだ。

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