第2話 教科書

 遠山くんと会話しちゃったぁぁぁあ!!!

 ヤバいヤバい可愛い、好き!


 ……こほん。

 改めて。私の名前は沖矢千聖。至ってどこにでもいる女の子……だと思う。

 突然だけど、私には好きな人がいる。特に特徴があるわけでも、顔がいいわけでもない男子だけど、私はずっと彼に片想いをしている。


「沖矢ー!教科書開けー!」

「あ、は、はいっ!」


 いけないいけない。授業に集中しなくちゃ……。

 私は先生から注意されて教科書を探すが、


「あれ……?」


 カバンも机の中も探したがどこにも見当たらない。恐らく生徒用ロッカーの中に忘れてきてしまったのだろう。

 ……どうしよう。普通なら隣の人に見せてもらえばいいのだけれど、窓際の席の私が借りられるのは、唯一の隣の遠山くんだけだ。


「……あう……」


 どうしよう、恥ずかしくて声を掛けられない。さっき消しゴムを渡す時ですら緊張したのに、教科書を一緒に見せてもらうなんて……!

 私が声を掛けるか掛けまいか迷っていると、


「沖矢さん、一緒に見ますか?」

「えっ」


 遠山くんから声を掛けてきてくれた。

 嬉しさで胸の奥がキュンと締まる。


「よ、よろしくお願いします……!」


 私は少し俯きながらそう答えた。

 ……顔、赤くなってないかな……?

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