総集編!飛ばして良さそうな話に大事な情報を入れていけ!

「総集編をやろうと思うんだ」

 ノミオスの酒場は、今日もクエストを終えた冒険者たちのにぎやかな喧騒に包まれている。

 このテーブルの客もまた、冒険者パーティーである。

 戦士のリキ、魔道士のツン、暗黒冥炎獣デスヘルケルベロスのポチ、そして盗賊のシフとバランスの取れたメンバー四人で構成されている。

「総集……なに?」

 戦士リキがその言葉を言うと同時に、どこか既視感を感じた。

(なんだ……この……デジャブどころじゃない既視感は……)


「物語はここに来て、各要素が栄養を奪い合う木の根が如くに複雑に絡み合っているので、ここらで一旦整理をつけておかなければならないと思うんだよね」

「……俺の知らない物語の話をしているのか?」と呆れたようにリキが言う。

ツンは「……っていうか、マジでアンタ月4ペースで総集編をやる気なの?」と顔を青ざめた。

 その一方でポチは興味のない様子で尻尾で床をぺしぺしと叩いている。


「というわけでこれまでの壮大な物語を振り返っていこうね」

「俺の知ってる壮大とどうやら意味が違うみたいだな」

「アンタが普段使ってる辞書教えなさいよ、店ごと燃やしてやるわ」

 もはや物理的影響力すら感じられるリキとツンのずっしりと重たい視線を気にせず、シフは滔々と語り始めた。


「えー、パーティーを追放されて、レイヴくんがパーティーインし、色々あって頑張ろうと思っています。おしまい」

「おしまうな」

「話を色々という一単語に混ぜ合わせてどす黒いブラックを作るのやめなさい」

 左のリキと右のツンからぐらんぐらんと身体を揺すられ、振り子のようにシフの身体が揺れる。それを見たポチが同じように尻尾を振るう。

「こっからが本番だから……こっからが~!」

 揺らされるシフが声を上げる、身体も声も揺れている。


「えー……なぁなぁで流している用語の解説をしていきます」

「流しっぱなしにしときゃいいだろ」

「ていうか説明すべきことは他に色々あるでしょ、バカなの?」

「グルル……」

「きみたちが何を言っても解説するんだからね!!ふんだ!!」



『冒険者』

「この作品における冒険者は冒険者ギルドに登録している知的存在のことを指すよ」

「最初の定義は冒険者ギルドに登録している人間だったわ。その後でポチみたいな存在のためにその定義が知的生命体にまで広がり、最終的には生命体じゃないアンデッドやゴーストに配慮して知的存在にまで定義が広がったわね」

「基本は命がけの日雇い労働者あるいは手弁当のトレジャーハンターだ。おえらいさんや金持ちの子飼いになることもあるが、そういうやつは冒険者とは呼ばれないな」

「冒険者ギルドに所属しなくても冒険者的な活動は出来るけど、冒険者ギルドに所属しない理由は無いよ。武器の割引とか冒険に役立つ講座とか、冒険者をやっている間は役に立つサポートもあるからね」

「怪我だの死亡だのには対応してくれねぇけどな」


『職業』

「冒険者が職業と言った場合、何をしているのかじゃなくて何を出来るかを指すね」

「私なら魔道士、リキなら戦士……、まぁそんな仕事無いわよね」

「シフは実際に盗賊という意味じゃなくて……盗賊行為が出来る奴という意味だが……」

(やっててもおかしくないわね……)

(やってるだろうなぁ……)

(我に骨付き肉を捧げよ……)


「色々なことが出来る人間は戦士/魔術師のゴンベみたいに復数職業を名乗ったり、魔法戦士のゴンベみたいな感じで職業をまとめたりするわね」

「結局、自称なんだよな……武道家のゴウマは攻撃魔法も回復魔法も出来るし、罠解除も出来るが、武道家を名乗ってる。まぁ、アイツの性格だな」

「S級冒険者のセニ君が勇者を名乗ったのは、俺は勇者的な行為が出来るっていうアピールだけど……まぁ、実力があるから出来ることだね。詐称にペナルティは無いけど、嘘つきに背中を預けたい人はそんなにいないと思うな」


「……グルル、我のような存在は、くだらない役割ではなく種族で名乗る」

「ポチは私達のパーティーで暗黒冥炎獣デスヘルケルペロスの役割ってことになるわけだからね」


『クエスト』


「冒険者のお仕事だね、大まかにわけて依頼、賞金首討伐、迷宮攻略の三種類」

「依頼は、文字通りだな……薬草取ってきてくれだの、家畜を守ってくれだの、行方不明の子どもを探してくれだの、ゴブリンを退治してくれだの……ま、依頼人がいる仕事全般だ」

「税金を払ってる依頼者には国から依頼に対する補助金が出てるわね」

「兵士が直接行けばいいんだろうけど……まぁ、餅は餅屋だからかな」


「賞金首討伐も、文字通りだな……モンスターでも犯罪者でも、やらかしすぎると国と被害者から賞金を掛けられる、まぁ、順番が逆になることもあるけどな。

「大体は生きてても死んでても問題はないけど、たまにリクエストがあるよね」

「何かを退治してくれって依頼と一桁ぐらいもらえる金額が違うことが多いわ、ただ早いもの勝ちになるからそこは注意ね」

「ま、周りとの調整も考えられて一人前の冒険者だな」


「迷宮攻略はまぁ、遺跡荒らしのパターンと略奪の2パターンだな」

「まぁ、前者の場合は文字通りの迷宮だけじゃなくて、海賊がどこかの島に隠した宝!みたいなのも含めるね」

「まぁ、基本古いところを探す。持ち主の所有権が消えてるしな」


「後者は迷宮ダンジョン認定を食らった建物の攻略ね」

「迷宮認定を食らうような建物は反社会勢力の建物だったり、反世界存在の建物だったりするんだけど……迷宮認定を食らった瞬間に、建物含めてその人達の所有権が全部消えるから恐ろしいね」

「ノミオスの酒場でも迷宮認定を食らった瞬間に、迷宮の仲間入りだ」

「非道悪逆大魔王の城、大海賊船グランリグレット、タマの家……いろんな建物が迷宮認定を食らって、冒険者に攻略されてきたねぇ」

「グルル……タマか……忌まわしき名よ……」


「お前が燃やした上に金貨までパクった教会も迷宮認定を食らってたから、セーフだったわけだな」

「……………………うん」

「な、なによその間は」

「と、というわけで、今日はこ、ここまで!本当にご、ごめんなさいいいいいいい!!!!」


「えっ、お前マジで何したの」

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