第7話 チュートリアルダンジョン第1層 その2
side Navi
「『魔法的』で片付けるぐらいなら最初から階段移動をなくせばいいのに...。」
「階段がないと困ることもあるみたいなのですよ?」
アトランダム・ダンジョンの各階層1フロア目は基本的にモンスター不可侵領域となっております。ですが何事にも例外があるように、ダンジョンによってはその不可侵領域にさえ侵入してくるモンスターもいるのです。
そうすると、どうなるか。ダンジョン内で完全に安全地帯と呼ばれる場所がなくなり、休息さえ覚束なくなってしまうのです。
それはそれで現実的ではあるのですが、あくまでワールド・アトランダムは
階段はそんな理由から生まれた救済措置(安全地帯)なのです。
プレイヤーさんならワールド・アトランダムからログアウトして休むことも出来ますが、NPCにはログアウトなんてありませんからね。
ただ、全てのダンジョンに階段があるわけではないので.....休めないところはやっぱり休めないのですけどね。
「とにかく、階層移動は一方通行になっているですから、後戻りはできないのです!」
「一方通行ねえ...。 一方に通行できる道があるなら、どこかに抜け道もある気がするんだけどなあ。 まあ、その辺はもう少しこのゲームを知ってから考えてみようかな。」
ええぇ...そんなこと考えるぐらいなら素直にダンジョン攻略しましょうよぅ。抜け道が見つかったら大変なのは、それを報告する
プレイヤーさんからの質問攻めもこれで一段落と言ったところで、現在はプレイヤーさんからのアクション待ちなのです。
当のプレイヤーさんはと言うと、腕組みしながら目を閉じると、そのまま直立不動になってしまいました。もしかして...寝てないですよね?ここ、ダンジョンですよ???
「...プレイヤーさん、なにかありましたです?」
「ちょっと待ってね。 今、考えを纏めているんだ。」
寝ていなかったことには一安心でしたが、纏めるもなにもまだ1フロア目から出てもいないのですけど...纏めるの、早くない?そう思いつつも、プレイヤーさんが待ってと言うのであれば
ダンジョンに突入していると言うのに、全然冒険っぽさが感じられません。そうなる予感はありましたが...これ、
「うーん。 ダンジョンに入ったばかりだけど...戻りたくなってきたなぁ。」
「!?」
先程までとてもご機嫌そうにしていたと言うのに、どのように考えを纏めたらそうなると言うのです?なにかお気に召さないことでもあったのでしょうか。
それともこのプレイヤーさんに限ってありえないと思っていましたが万が一、いや億が一ぐらいの可能性で.....ダンジョンが怖くなった、とか。
ワールド・アトランダムほどリアルなゲームですと、モンスターに襲われた時の恐怖は現実で化け物に襲われるのとそう変わりはありません。実際に体験してみて、恐怖を覚えてゲームを辞めてしまう人も中にはいるぐらいなのです。
特にアトランダム・ダンジョン内は暗く、おどろおどろしい雰囲気の場所ばかりなのでワールド・アトランダムに慣れたプレイヤーさんであっても、ダンジョンに入ってから足が引けることもあるみたいです。
私からすればプレイヤーさんの
「例えばなんだけど、ここにずっと滞在することって可能なの?」
「えっ! もしかして...こんな場所で暮らすつもりです???」
日当たり悪く、隣人は愛想の悪いモンスター。
立地条件最悪ですね???少なくとも
そうなったらもうサポートフェアリーは必要ないですよね?
「あ、いや、例えばの話だよ。 僕だってこんな場所で生活したいとは思わないし。」
「そうですか、それなら良かったのです...。」
その辺りの感覚は私と同じようで心底ホッとしました。最悪、『そこがいいんじゃないか。』と言われるところまで想像していたのです。
「そうですねえ、アトランダム・ダンジョンに時間制限はありませんので死ぬまで滞在することは可能なのです。 ただ、その場合は食料をどうにか確保しないとひもじい生活になりそうです?」
「はぁぁぁぁ...やっぱりそうなるよね。 食べ物だけは持ち込んでおけば良かったよ。 失敗したなあ、戻りたくなってくるなあ。」
ははあ、先程の戻りたい発言はこれが理由でしたか。
ワールド・アトランダムでの空腹はプレイヤーさんであればなにも食べなくても死にはしないものの、ステータスにマイナス補正がかかってしまうので食べれるならなんであれ食べた方がいいのです。空腹感も現実に近しく再現されていますしね。
そのため、ダンジョン遠征に携帯食料は必需品だったりします。
ただ、そうは言っても。
「シフォンのアトランダム・ダンジョンはそれほど大きなダンジョンではないので、お腹が空く前にクリアできると思うのですよ?」
他のダンジョンならいざ知らず、このチュートリアルダンジョンであれば空腹感を抱く前にクリアできる程度の大きさしかありません。
心配なら、さっさと進みましょうよぅ!
「そうかもしれないけど...せっかくの初ダンジョンなんだからさ、楽しみ尽くしたいじゃない? 自慢じゃないんだけど僕、今までダンジョン攻略を妥協でスキップしたことないんだよね。」
「
「えっ!」
「えっ? あっ!」
プレイヤーさんがちょっと決め台詞っぽく言うものだから、考えるより先に口が動いてしまいました!な、なるほど、これが『
プレイヤーさんもまさか
「それもそうか...。 じゃあ、今度からはなんて言おう?」
「はぇ...?」
あ、あれ?もしかしてプレイヤーさんあまり気にされていない?改めて考えてみると、このプレイヤーさんが他人の言葉に大きく左右されるようには見えませんでした。
人の話を深く聞かないタイプのプレイヤーさんで良かったのです!でもやっぱり私の言葉ももう少し聞いてほしいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます