児童文庫らしい児童文庫

 最初の数ページに当たる部分を超えると、題材に興味が無い読者でも惹きつけるものがある。
 ただし、角川つばさ文庫で求められるタイプかというと、オバケがシツジの七不思議と同じタイプの『面白いけどつばさ文庫を読みに来る子供には読まれない』感じになりそうな気がする。
 レーベルカラー的につばさ文庫の読者層は夏休みの課題図書になりそうな雰囲気の話を好まないので、この作品の暖かな雰囲気がどこまで通用するのかと思う。個人的にはこういう雰囲気は好きだが、どちらかというとハードカバーにありそうな話で、キャラのキャッチーさやスリルといった、この作品の雰囲気と合わないものを取り入れないとシリーズ展開が厳しそう(≒受賞させたいと思われなさそう)。しかし文章を見た感じ作品のコンセプトや強みをわかっていそうな感じがするので、それらのマイナスポイントを力技でねじ伏せられそうな気もする。
 面白い話であることは間違いないし、読書好きな子供だったら食指が動く、読んでよかったと思える作品だが、恋愛要素もスリル要素もメインでないと看板作家でさえ打ち切りに瀕するつばさ文庫でやっていくには、レーベルカラーごと変えるほどのパワーが必要だと思うので、今後の話がとても気になる。
 自分も同じ第10回角川つばさ文庫小説賞を狙っているので、一話一話を注視して分析し、手本としたい。