第11話金色のアサギマダラ
そのたまごを見つけた時、ぼくはベッドの上に戻ってきた。
「なんだ、このゆめのようでゆめじゃないような何かは・・・?それにあのアサギマダラのたまご・・・、
ぼくはぎもんを持ちながらも朝のしたくと朝ごはんをすませて、学校へと出かけていった。
教室の席にすわったぼくは、再び今までに見たことを思いだして考え込んだ。
「よお、山代。お前、どうしたんだ?さっきから何か考えているという感じがしたぞ。」
日野くんが声をかけてきた。
「ああ、ちょっとふしぎなことがあってね。そのことについて考えていたんだ。」
「ふしぎなことってなんだよ?おれにも教えてくれよ。」
「いいけど、今聞いたことはぼくが実際に体験したと信じてくれる?」
「ああ、もちろん。おれとお前の仲じゃないか。」
日野くんはぼくのせなかをたたきながら言った、そしてぼくはこれまであの島であったことを日野くんに説明した。
「ぼくはこの島でのできごとを、ゆめじゃないかと思っているけど、日野くんはどう?」
「うーん、たしかにお前の家のベッドから南の島にワープするなんて、ふつうじゃあ考えられないなあ・・・。でもやっぱりこれはゆめだと思うよ、お前ってアサギマダラのことがかなり好きだったから、その分リアルに感じているだけなんじゃないか?」
たしかに日野くんの言うことはなっとくできる。
現実ではありえないことばかりだから、これらはまちがいなく全てゆめだ。
「そうだよね・・・、みんなゆめだよね。すっきりした、変なこときいてごめんね。」
「謝らなくてもいいんだよ、それにしてもお前のゆめの話ってなんか物語みたいで、続きが気になるぜ。またなにかあったら教えてくれよ。」
「うん、また話すね。」
ぼくは日野くんに少しウソをついた、本当はゆめかどうかまだわからなくてすっきりしていない。
放課後、ぼくはさっきの話をオオクワくんにしてみた。
「それはふしぎだね、君が見つけたアサギマダラのたまごには、もしかしたらなにか秘密があるかもしれないよ。」
「うん。それに昨日、オオクワ・クロノカミが気になることを言っていたんだ。」
「気になることってなに?」
「アサギマダラが飛んできたかの島にて、金色のアサギマダラが生まれるだろう・・・。これって、何かの予言かな?」
「うん、予言ということにはまちがいないと思う。だけど、かの島が一体どの島なのかがわからないんだよな。」
「うん、ぼくもどのあたりの島なのかわからないんだ。あとね、金色のアサギマダラというのも気になるよ。」
「どんなアサギマダラなんだろう?やっぱり羽が金色なのかな?それ以外にもふつうのアサギマダラとは、なにかちがうところがあるのかな?」
ぼくとオオクワくんは、金色のアサギマダラが一体どんなものなのか考えたが、答えはでなかった。
「そういえばオオクワくんとオオクワ・クロノカミって、どんな関係なの?」
「ああ、やっぱり気になるよね。」
そしてオオクワくんは話しだした。
「小学一年生のときの話なんだけどね、ある夏の日に
「そうだったんだ、それじゃあオオクワ・クロノカミは相棒みたいなものだね。」
「そんなとこかな。それより、野崎さんに話をつけてくれた?」
「ごめん、母さんに聞いてみたけど、いつ来るかは本人の電話からじゃないとわからないって。」
「そっか・・・、じゃあそれまで待つとするよ。」
そしてぼくとオオクワくんは別れた。
それから二日後、野崎さんから電話があって「明日のお昼に、家に来るらしい。」と母さんからきいた。
ぼくは今日の放課後、オオクワくんにそのことを話した。
「明日来るのか。それじゃあ明日、君の家に来るよ。来てもいいかな?」
「いいよ、オオクワくんなら大歓迎だよ。」
そして翌日、ぼくは家で野崎さんが来るのを待っていた。
午前十一時に、オオクワ君が家に来た。
「やあ、来たよ。」
「オオクワくん、どうぞ上がって!!」
「あら、お客さん?」
母さんがげんかんに出た。
「うん、オオクワくんというんだ。」
「初めまして、
オオクワくんはまじめなあいさつをした。
母さんが「どうぞ」と言うとオオクワくんは上がっていった、そして母さんはぼくに言った。
「あの子、とてもしっかりしているじゃない。あなたにあんないい友達ができるなんて思わなかったわ。これからも、仲良くするんだよ。」
そして母さんはオオクワくんにお茶とおかしを用意した。
「野崎さんが来るのはまだ先だね、それじゃあ君が野崎さんとしたアサギマダラの追跡プロジェクトの話をしてよ。」
「うん、いいよ。」
ぼくは野崎さんが来るまで、オオクワくんに遠征の楽しかった日々を語った。
それはあっというまに過ぎて行き、そして野崎さんが家にやってきた。
「やあ、山代くん。」
「あ、野崎さんだ!今日はオオクワくんが来ているんだ。」
「初めまして、オオクワくんこと大鍬秀一です。話は山代くんから聞いています、お会いできてうれしいです。」
「はじめまして、
「はい、そうです。ただ、ぼくの場合は山代くんとはちがいます。」
オオクワくんは野崎さんに、オオクワ・クロノカミのことについて話した。
「それでぼくはその日から昆虫と会話できるようになったんです。」
「なるほど、とてもスピリチュアルな話だね。」
「スピリチュアルといえば、ぼくも気になることがあるんです。」
ぼくは野崎さんに、眠っている時に見る南の楽園のことや、金色のアサギマダラのことについて話した。
「金色のアサギマダラ・・・。確かに実際にいたら大発見だけど、島の場所がわからないとなると実際に見るのは難しいな・・・。」
「そういえば、本州から南へ来たアサギマダラはどこまで行くのですか?」
「南西諸島か台湾まで行くよ、あそこは冬でも春みたいに暖かいからね。」
「うーん、ぼくが見ているのはゆめ・・・?それとも一体、何なんだろう?」
「むずかしいなあ・・・、でも君がアサギマダラにみちびかれているというのは確かなことのようだ。」
野崎さんが言った、たしかにこれまでの出来事を考えるとそう思う。
だけどぼくはどうしてアサギマダラにみちびかれているんだろう?
いろいろぎもんがあるけれど、ぼくはなによりも金色のアサギマダラを間近で見たくなった。
そのためには、自分でアサギマダラを飼育するしかない。ぼくは決めた・・・。
「とにかくぼくはあそこで、黄金のアサギマダラが生まれるかもしれないたまごを見つけたんだ。それでもし育てたら、黄金のアサギマダラが見られるかもしれない。だからぼくは、あのたまごを育てることにするよ。」
ぼくの言うことにオオクワくんと野崎さんはぽかんと口を開けた。
「育てるって・・・、山代くんが育てるということ?」
「うん、ぼくが育てて黄金のアサギマダラに無事成長させてやる!」
ぼくは決意に燃えていた、それを見ていたオオクワくんと野崎さんは言った。
「君らしいね、ぼくも協力するよ。」
「黄金のアサギマダラ、私もぜひその姿を見てみたいなあ。私にできることがあれば、えんりょなく言ってくれ。」
「ありがとう、二人とも!!」
「あ、そうだ!山代くんにお土産があるんだ。」
そう言って野崎さんは、持ってきていたかばんからがくぶちを二つ取り出した。
そこにはアサギマダラとカブトムシが一匹ずつならんだ標本と、アサギマダラとオオクワガタが一匹ずつならんだ標本があった。
「うわーっ!!標本だ!!」
「これ、どうしたんですか?」
「アサギマダラ追跡プロジェクトに協力してくれたお礼に、知り合いにたのんで作ってもらったんだ。山代くんに二つともあげる。」
「ありがとう、野崎さん・・・。そうだ!この内の一つを、オオクワくんにあげてもいいかな?」
「ああ、君がそう言うならいいよ。」
「え!?いいの?なんか、悪いよ・・・。」
「そんなこと言わないでよ、ぼくの友だちになってくれたお礼だよ。」
「ありがとう、山代くん・・・。」
オオクワくんはアサギマダラとオオクワガタの標本を選んだ。
そしてしばらく話したとこで、野崎さんとオオクワくんは帰っていった。
そしてぼくは、自分の部屋に標本を大切にかざった。
その日の夜、ぼくはあの島にいた。
「今夜もここに来たんだね、それじゃあアサギマダラのたまごをさがしに行こう!」
そしてぼくは島の中を突き進んでいった。
そしてたまごを見つけたあの場所に到着したんだ。
だけどいくら一枚ずつガガイモの葉っぱをめくってみたけど、あのアサギマダラのたまごはどこにもなかったんだ。
「おかしいなあ、たしかにあったはずなのになあ・・・。もしかして、もうかえったのかな?」
ぼくはたまごのことが心配になって、必死にたまごをさがした。
そしてあるガガイモの葉っぱをめくった時、たまごをめくった時と同じ気配を感じた。
「これって・・・、アサギマダラのようちゅうだ。ということは、生まれていたんだ」
小さなようちゅうだけど、なんだかとてもすごいことがおこりそうな予感を感じさせるようちゅう。
まちがいない、あのたまごから生まれたアサギマダラのこどもだ。
ぼくはようちゅうがついている周りのガガイモを、あるくらい集めた。
そしてアサギマダラのようちゅうとまわりの葉っぱを持ってきた虫かごの中に入れた。
そしてぼくはベッドの上にもどってきた、ぼくはこれから金色のアサギマダラを育てていくことに、わくわくしていた。
ぼくはそれから自分の部屋の机のすみで、アサギマダラのようちゅうを飼った。
食草の葉っぱは、無くなったら野崎さんが用意してくれることになった。ちなみにぼくが島から持ってきた葉っぱの名前は、キジョランというそうだ。
「さあ、よく食べて大きくなるんだよ。」
ぼくはアサギマダラのようちゅうを大切にそだてた。
アサギマダラのようちゅうは、とにかくキジョランの葉っぱを食べていく。
ぼくは毎日、アサギマダラのようちゅうを見るのが日課になった。
そんなある日のこと、ぼくが家に帰るとぼくの部屋からカブトムシとアサギマダラの標本が無くなっていることに気がついた。
「あれ?おかしいなあ、確かここにかざってあったはず・・・?」
持ち出したのか、いやそんな覚えはない。しかし部屋中さがしても、標本はみつからなかった。
するとそこへ母さんがやってきた。
「どうしたの、なにかさがしもの?」
「母さん、標本を見なかった?カブトムシとチョウの標本なんだけど・・・。」
「ああ、あの虫の標本ね。気持ち悪かったから、捨てたわ。」
母さんは平然と答えた、ぼくはどうしてそんなことをしたのか訳がわからずにいた。
「え、捨てた・・・?一体、どうしてそんなことをしたの?」
「だって、気持ち悪いからに決まっているからでしょ?あんなもの、部屋にかざったらダメじゃない。」
「あんなものだって・・・?」
確かに母さんには、あの標本がぼくにとってどれほど大事なものかはわからない。
だけど・・・、だけど、だけどだけど!!ぼくは大切なものを、勝手に捨てられたんだ!!
「なんで・・・なんで捨てたんだよ!!ふざけんじゃないよ!!このくそばばあ!」
「きゃあ!!ちょっと、なにするのよ!!そんな・・・、やめ・・・やめて!!」
ぼくはあばれた・・・、とにかくあばれた。
もう今までのことなんか、何もかもわすれてあばれた!!
親をなぐってはいけないということなんか、ぼくの心にはとどかない。
大切なものをうばったのは、ぼくのことをいつも思っているはずだった母さん。
いや、目の前にいるのは母さんじゃない!!母さんなら、こんなひどいことはしないはずだ!!
「出てけ!!ここから出てけ!!うわああああああーーーーー!!」
ぼくは虫取りあみを持つと、
母さんは
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