いじめ
中学2年になると、私は先生の目など気にせず、学校でも堂々とメイクをするようになった。
何度も生徒指導に引っかかったが、私はメイクを辞めることが出来なかった。
すっぴんでみんなの前に出る事など、怖くて想像する事すら阻んだ。
第一彼に私の本当の姿を見られたくなかった。
夏になり、プールの授業が始まってからは、ずっと体育は見学していた。
クラスの女子は、メイクが落ちるからという理由で見学する私に腹を立て、私をシカトするようになった。
それでも私は、そんなことは気にならないほど彼を優先していた。
その頃はまだ気づいていなかった。
私が、彼ではなくメイクを優先していた事を。
私に対するいじめは日々深刻化していった。
それでも私はメイクを辞めなかった。
原因がメイクであることは分かっていた。
それでも、すっぴんで外を歩くことは出来なかった。
「一ノ瀬さんてさ、めっちゃ変わったよね」
メイク覚えたての頃は、この一言だけで嬉しかった。
でも、今は「ほんとはブスなのにね」と遠回しに言われているようにしか思えなかった。
実際そのつもりで言われているのだからとうぜんだ。
私は悪くないのに、人の汚さを見せつけられているようだ。
ある日、廊下を歩いていると突然、頭から冷たいものが降ってきた。
ビックリしてへたりこんだ私の目に飛び込んできたのは、トイレ掃除用の青いバケツを持ったクラスメイトの顔だった。
皆、笑いもせずに、真顔で私の顔を見ていた。
カシャっと、音がした。
ショートカットの女子が私の写真を撮っていた。
メイクの取れた、ドロドロの私の顔を。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます