いじめ


中学2年になると、私は先生の目など気にせず、学校でも堂々とメイクをするようになった。

何度も生徒指導に引っかかったが、私はメイクを辞めることが出来なかった。

すっぴんでみんなの前に出る事など、怖くて想像する事すら阻んだ。

第一彼に私の本当の姿を見られたくなかった。


夏になり、プールの授業が始まってからは、ずっと体育は見学していた。

クラスの女子は、メイクが落ちるからという理由で見学する私に腹を立て、私をシカトするようになった。

それでも私は、そんなことは気にならないほど彼を優先していた。

その頃はまだ気づいていなかった。

私が、彼ではなくメイクを優先していた事を。


私に対するいじめは日々深刻化していった。

それでも私はメイクを辞めなかった。

原因がメイクであることは分かっていた。

それでも、すっぴんで外を歩くことは出来なかった。


「一ノ瀬さんてさ、めっちゃ変わったよね」

メイク覚えたての頃は、この一言だけで嬉しかった。

でも、今は「ほんとはブスなのにね」と遠回しに言われているようにしか思えなかった。

実際そのつもりで言われているのだからとうぜんだ。

私は悪くないのに、人の汚さを見せつけられているようだ。


ある日、廊下を歩いていると突然、頭から冷たいものが降ってきた。

ビックリしてへたりこんだ私の目に飛び込んできたのは、トイレ掃除用の青いバケツを持ったクラスメイトの顔だった。

皆、笑いもせずに、真顔で私の顔を見ていた。

カシャっと、音がした。

ショートカットの女子が私の写真を撮っていた。

メイクの取れた、ドロドロの私の顔を。


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