メイク

@nana_to


誰も私の本当の顔を知らない。


中学校に入学してから、メイクを覚えた。

きっかけは、好きな人が出来たこと。

私が好きになった人は、クラスの人気者で、可愛い女子ともよく絡んでいた。

人間なんてどうせ顔だから、パッとしない私の顔なんかで彼を振り向かせる事はできない。

それでも、諦めきれなかった。

それまで素通りしていた化粧品売り場に何時間も入り浸り、少ないお小遣いでファンデーションを買った。

パッケージを開けた時の化粧品の匂いと、初めて感じる満足感を、今も忘れられない。

蓋を開け、パフに粉状のそれを付ける。

粉を少し舞い散らせながら肌に当ててみた。

すると、地黒だった私の肌が、すこし明るく、サラッとした質感になった気がした。

私は、この変わりように驚いた。

変われるかもしれない。

彼に気に入ってもらえるかもしれない。


その日から、私はメイクの虜になった。

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