続・種子は未来に花開くか
料理人の鹿島が麺を茹でている。その様子を一日千秋の思いで眺めていた。麺が茹で上がると、湯を切り、スープに浸す。そして、具材をトッピングしていった。
ぐきゅぅとお腹が鳴る。日葵はそれに気づくと、水筒に入れていたミルクティを口にした。胃をミルクでコーティングする必要があった。
ボワッ
宇宙一辛いラーメン・
それを合図に日葵はラーメンを食べ始めた。辛い。けれど、その感覚が心地よかった。突き刺さるような辛さが醤油味の甘みとマッチし、さらにその奥にある味の深みを感じさせる。美味しいラーメンだった。
具材はチャーシュー、もやし、わかめ、メンマ、コーン。チャーシューの肉の旨みが食欲を促進し、もやしのシャキシャキした食感が辛さに辟易した時にリフレッシュ間を与えてくれる。メンマはコリコリとした新たな歯応え、コーンは甘みを追加し、麺とスープの辛さに更なる味わいをもたらしてくれるのだ。
「これ、美味しいよ!」
日葵はにっこりとした笑顔になった。その様子を窺うものがある。対戦相手の
巳螺野は目を閉じたまま、日葵がどれだけラーメンを食べているか窺っていた。
「ふふ、日葵さん、その麺、燃えますよ」
ボワッ
巳螺野の言葉と同時に、口の中に入っていた麺が燃える。フランベに使用された油と炎が燻ったままだったのだろうか。
「ああ、これ、知ってる」
咄嗟に修行時代の記憶が蘇る。ヤスヒコはこんな自体の対処法を口酸っぱく練習させていたのだ。当時はこんな事態があるはずがないと思っていたが、実際にあったのだ。
日葵は一息に大量の麺を頬張った。火は質量によって消える。
「ふふ……」
巳螺野は意味ありげに笑った。何か、自分に利することがあったかのようだ。
日葵はそんなことは気にせずに、ラーメンを食べ進める。日葵にとっては待ちに待った瞬間であり、喜びであった。
「ああ、美味しい。こんなの一生食べられるんだけど」
そんな喜びの声に対し、巳螺野がその閉じていた目を開いた。
「今です。その胃の氾濫を味わいなさい」
その言葉とともに日葵の身体に違和感が走った。これは何が起こっているのだろう。日葵はお腹を押さえ、うずくまった。
こんなことは今までなかったことだ。
熱いものが胃を逆流し、喉元に這い上がってくる。熱い。辛い。気色悪い。いくつもの不快な感情が同時に押し寄せていた。
日葵はどうにかそれを抑え、込み上げてきたものを飲み込んだ。吐いてしまったら、これ以上の苦痛を味わうのだということは目に見えていた。
しかし、恐るべきは
かつてない恐ろしい戦いが始まっている。日葵はそれを実感した。
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