選手入場
「さあ、オリンピック予選大会も第二回戦が終わり、日本代表候補も6人へと絞られました。まずは、その6人を紹介していきましょう」
アナウンスの声が響いていた。今回の大会で司会を担当する女子アナウンサー、
彼女の言葉とともに、6人の選手が入場してきた。
「まずは今大会の特別顧問でもあり、言わずと知れた大食い競技・銀メダリスト、
銀ギラに輝くラメをまぶした紫色のドレスを身に纏う六華が会場に集まった
さすがの貫禄というべきか、自然な笑顔がカメラと観客に向けられている。篝火花から見れば厚化粧に思えるものの、観客からしてみれば、目鼻立ちのはっきりした美人に見えることだろう。
「二階堂選手はカリー専門店ンジャメナのオーナーもしており、激辛に対する研究もバッチリ。幾度かの公式大会でも優勝を飾っている本格派です。本大会の優勝候補筆頭であり、オリンピックでの活躍も期待されています」
解説の
そして、次の瞬間、カメラが次の女性を映した。
「続いての選手は、売り出し中の女子大生。すでに、いくつかの大会でその存在感をアピールしている天才的な激辛アスリート、
白とピンクのリボンとフリルがふんだんに入ったワンピース姿の芍薬が映し出された。自然なメイクながらその若々しさがアピールされるようである。その姿はまさに量産型女子大生と呼ばれたファッションだった。
「東雲選手はすでに二階堂選手と並ぶ実力者といっていいでしょう。彼女の持つ量産という技は、料理を小分けにして一気に勝負を仕掛ける大技です。対戦選手は注意が必要でしょう」
羊頭の解説が終わると、再びカメラが新しい選手を映す。
「続いての選手も有力者です。不安手ながらも高いポテンシャルを発揮すると評判のようですね。
カーキ色のシャツとボトムズ、ハンチング某を被った目つきの鋭い男が入ってきていた。どこか病的な雰囲気もあるが、それは激辛フードファイターとしての凄味でもあると受け取れる。
「兎山選手は特定の相手をターゲティングして勝負を仕掛けてくるのが特徴です。その執拗なアタックに調子を崩してしまう選手も多いようですね。対戦相手には厄介なプレイヤーといえるでしょう」
羊頭の解説はなかなか不穏なもののように思える。しかし、篝火花はそんなことは考えないようにして、次の選手を紹介する。
カメラは地味な女性の姿を映していた。
「本大会のダークホースの一人、
その顔はぼさぼさの髪で隠れている。くすんだ薄紫のTシャツに薄いピンク色のロングスカートという服装が、華やかな六華や芍薬と比較して、地味な印象になっているのだろう。
「公式試合には出ていなかったようですが、野良試合では相当に強かったようですよ。なんでも、その瞳から、猫目の女、転じて
撫子は顔が見える瞬間こそが重要ということだろうか。よくわからないものを感じつつ、カメラは次の選手を映していた。
「こちらは
真っ黒なスーツに身を包んだ長身の男性だった。痩せ型のため、その姿は蛇のように見える。不審なものは感じつつも、具体的にどこが不審なのかはわからないという印象だ。
「彼の詳細は本大会でわかっていくのでしょうか。第一回戦、第二回戦では優勝候補の選手を撃ち破っている、まさに台風の目と呼ぶべき存在です。なんでも、予言めいたことを行い、その予言の通りに選手たちが脱落していくという話ですが……」
羊頭が言葉を澱ませる。彼でもわかっていない選手ということなのだろう。
だが、次の選手が映った瞬間、場の空気が変わった。
「さあ、最後の選手となります。こちらも優勝候補の大本命、
オレンジ色の着物姿の女性がカメラに映っている。普段は箱根の旅館で仲居さんをしているという話なので、その衣装を着てきているのだろう。あまりカメラを意識していないのか、キョトンとした表情のまま、会場に進んできていた。
「豚饅頭アナの言葉通り、高梨選手に期待している方は本当に多いです。公式試合の出場は少ないにもかかわらず、この大反響ですからね。
なんでも、大食い競技の激辛部門立ち上げの功労者、
羊頭の解説が終わる。そうなると、第三回戦のルールを説明しなくてはならない。
篝火花は手元に置かれたメモをチラと覗くと、声を張る。
「では、第三回戦ですが、3VS3の団体戦となります。勝ち進めるのは勝者チームの3人、そして、審査員の判定により敗者チームから1人が勝ち残ることになります。
そして、肝心のチーム分けですが、これからくじ引きにより決定します」
選手たちの中でざわめきが起こった。すでにライバル関係や協力関係が出来上がっているのだ。それが今回のくじ引きによりシャッフルされる。
勝ち進めるかどうかの大部分は誰と組めるかに掛かっていた。
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