未来人
「なんだってぇーっ!
「いや、別に驚愕の事態でもなんでもないな。そもそも、あいつ予選突破できるような実力者じゃないだろ」
落ち着きを取り戻して、そう呟く。
しょせん、人吉などはチンピラに過ぎない。素人の集まる大会では無双できたとして、激辛ファイトを齧ったものを相手取れば、たちまちその馬脚を露わにしてしまうだろう。それを倒したからといって、対戦相手に注目する必要も特には感じない。
しかし、報告に現れたオリンピック予選実行委員の
「人吉の出場した一回戦で勝ち進んだのは
ただ、問題なのは人吉が反則負けで敗退したことです」
それを言われて虎島は考え込む。
自滅するなら勝手にしろと言いたいところだが、問題になるのは虎島と人吉の関係が取り沙汰されることだ。オリンピック予選実行委員長と反則負けのチンピラに黒い交際があったなど、週刊誌の見出しだとしても考えたくもない。
「まったく、ろくでもない人とろくでもないことばかりしてるから、こんな時に困るんですのよ。自業自得としか言いようがありませんわ」
そう言ってチャチャを入れたのは
選手が実行委員になることはできないが、選手の立場からの意見も必要となる。そのため、オリンピックの大食い競技で銀メダリストとなった栄光を持ち、激辛のオリンピック予選に参加すると公言していた六華に白羽の矢が向けられたのだった。
「まあ、そう言ってくれるな。だが、策なら考えてある」
虎島がそう言うと、部屋の陰からぬっと人影が現れた。長身だが痩せており、その陰湿な表情もあって、一見して蛇のような男だった。
六華と桔川はその存在に気づいていなかったらしく、恐怖を抑えきれず悲鳴を上げる。
だが、蛇男はそのことに意に介さず、虎島の元まで来ると囁いた。
「兄さん、僕のことだね」
虎島は頷く。この男こそ虎島グループの
年齢はほぼ同い年だが、虎島が少し上。それにも関わらず、虎島が甥で、巳螺野が叔父である。奇妙だが。
「お前ならこの大会を荒らし回り、日本代表の座を手にすることができる。あの
虎島がにやりと笑う。それを相変わらず何を考えているかわからない陰湿な表情のまま、巳螺野は頷いた。
そのやり取りを眺め、桔川は困惑したように呟いた。
「なんで、実行委員長が大会を荒そうとしているのよ」
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