九話:身体強化っておもしろいね!


 それから、魔法の練習に切り替えてみたけれど、今のところぜんぶ身体強化になっている。

 なんどやっても身体強化。


 さっきは出来たのにね。

 なにが違うんだろう?

 うーん……まあいっか!

 身体強化の練習をしていたら、いつか出来るよね!

 うん! きっとそう!


『出来る事を、一つずつ、だね』


 うん!

 よーし! がんばるぞー!


 泉の周りをいっぱいに使って身体強化の練習!


 身体強化ってすごい!

 すこし練習しただけでも、色んなことが出来た!

 脚に魔力をあつめたら、いつもよりも高くジャンプ出来たし、鼻にあつめたら、すっごく草の香りがしたし、尻尾に魔力をあつめて振ってみたら、ぶわーって風を起こすことも出来たんだー。

 それで一日で上手になっちゃった! って思ったんだけれど、エルピが言うには魔力の動かし方がまだまだなんだって。

 だから、魔力をあつめた分だけその部分が強化されるって聞いて、体中の魔力ぜんぶを一か所にあつめようとしたら、エルピに怒られちゃった。

 魔力はたくさんあつめる時は、上手に魔力を動かさないと危ないんだって。

 だから、魔力を上手に動かせるようになるまで、たくさんの魔力をあつめるのはお預けなの。

 僕が魔力をあつめすぎたら、エルピが『ぶぶー』って言ってくれるんだって。

 あー、はやく上手になりたいなー。


『こら、集中が、途切れて、いるよ』


 あ、いけないいけない。

 集中集中……うへー。


『うへーって、大丈夫? 疲れた?』


 ううん! 大丈夫……じゃないかも!


『そう? じゃあ、この一回の後、休もうか』


 わかった!


 目を閉じて体を流れる魔力に意識を集中させる。


 どこに魔力をあつめようかな?

 脚の身体強化はさっきやったから……あ、うしろ脚だけに身体強化をしたら、どうなるんだろう?

 あれ? でも一回やったような…あ、魔法になっちゃったんだっけ?


 じゃあ、もう一回やってみよう!


 さっそくうしろ脚に魔力を動かしてあつめる。

 あつめすぎると危ないから、ほどほどに、でもうしろだけだから、そのぶん多めに……よし! ぽかぽかしてきた!

 あとは思いっきり地面を――



 蹴る!



 どしんって音。

 体が浮いている感覚。

 ゆっくりとたてに回っていく視界。

 地面はまえからうしろにすぎていって……あ、泉が見えた。


 ぼちゃーん。


 ……うーん。


 成功?


『え、成功な、状況?』


 水浴び……?


『いや、ボクに聞かれても』


 それにしても、泉の中は綺麗。

 頭をあげると、澄み渡った深い青に、星の様にキラキラと瞬く小さな光と帯の様に揺らめく柔らかい光。

 頭をさげると、透き通った淡い青に、まっすぐ伸びる光の柱。


 どっちも綺麗で、いつまでも見ていたい! けれど、さきに息継ぎをしたいな!

 そろそろおぼれちゃいそう!


『な!? そういう事は、早く言って! え~っと、足の方が、上だよ! そっちは、下! 明るい方、だよ!』


 背中から落ちたのか、上下逆になっていたみたい。

 でもそのおかげで、泉の底が魔力感知でみなくても、キラキラしていたことがわかった。


 やった。

 今日もいい日。


 ウキウキ気分で水面から顔を出す。


 鼻から入ってくる空気がいつもより気持ちいい。


 いいことがいっぱいで、うれしいな。

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