二日目

 二日目は昨日と違い朝から自由時間で、すぐにあの山にやってきました。僕が到着した時、彼女は既に、昨日と同じく例の鳥居の上に座っていました。


 僕は昨日、家に帰った後に、明日、彼女と話す事をいくつか考えていました。しかしやはり、彼女はその日一日中喋ることはありませんでした。が、僕の話すことに、例えば頷いたり手を振ったりと身振りで応じてくれたので、特段つまらないということはなく──思い返せば相当に一方的でしたが──楽しく話していました。


 しばらくそうして、昼になりました。僕は家から昼ご飯におにぎりを持ってきていたので、それを取り出しました。彼女は何も持っていないようだったので二つあるおにぎりの片方を渡そうとすると、彼女はそれを受け取りませんでした。本当にお腹は大丈夫かとか、一旦家に帰ったりしないのか聞いても、頷くばかりでした。僕は不思議に思いましたが、彼女の体は非常に小さく細かったので、あまり物を食べない子なのだろうと合点しました。


 彼女は僕が食べ終わるのを、すぐ隣に座って待っていました。というより、見ていました。


 昼食を食べ終わり、僕は唐突に山の頂上へ行きたくなりました。山にいるんだから、頂上の方に向かわないのはおかしいじゃないか、と考えました。

 その旨を彼女に伝えて、善は急げとすぐに立ち上がり歩きだしました。坂の上の方へと歩いていこうとしましたが、少し歩いたところで彼女がついてきていないことに気が付きました。振り返ると、彼女はさっきまでの場所から動かずに立ってこちらを見ていました。行こうよ、と手を振りましたが、彼女は首を振るだけでした。仕方がないので山の上に行くのはやめました。


 その後は、特に特筆すべきことはありませんでした。昨日行かなかった場所を案内されて、そこには小さな洞窟がありましたが、危ないので入りませんでした。たいして大きな山でもないので、見所という見所はこの洞窟とあの滝川くらいのようです。

 



 家に帰ると、まず家の前になにやら見た事のないものがあって、父に聞くと祭りに使うものだそうです。隅の部屋に置いてあった綺麗な着物も同じだそう。

 その日の食事は昨日より豪勢な気がしました。

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