2nd turn. 『クローダス・リフダー』
よく晴れた日であった。
「いやあ、楽しみだなあ」
「ウチの大将がまさか騎士様相手に
「なあ、勝てると思うか?」
「勝つっしょ~!! なにせ親分は村一番の
「……」
その日、村の広場は村人たちでごった返していた。
こんなに人が集まるのは、収穫祭のときくらいだろうか。去年の祭りのときに食べた山羊肉の焼いたやつ、美味しかったなあとノアは思い返しながら、既にイベント会場の様相を呈した決闘の場へと至った。
小さな田舎の村のことである。2日前に約束されたノアと王国騎士クローダス・リフダー男爵の決闘の約束は瞬く間に村中の噂となり、元々行事や娯楽の少ない村人たちの大騒ぎの恰好の口実として駆け巡ったのである。
その中でも、武勇に優れ
そのスター選手が試合まで行うというのだから――辺境の国境地帯の小さなこの村にとっては、それは滅多に起こり得ない大イベントであった。
「これは――まあ、随分」
そのような大袈裟な騒ぎの会場となった村の広場を前にして、当のクローダス・リフダーは苦く笑った。
「どうされます?」
「約束を破るのは私の流儀に反するからね。やるさ――アッケル君! 道を開いてくれるよう皆に言ってくれ!」
「はっ。――聞いたな、皆! 決闘者の入場だ! 花道を作ってくれ!」
クローダスの指示に沿い、騎士団の男が村人たちへと呼びかけた。古代神話に記される海割りの奇跡めいて、さっと人波が道を開ける。
「うん。ありがとう――皆さん、ご協力に感謝します」
クローダスは観衆たちへと手を振りながら、開かれた花道を悠然と進んでゆく。
「きゃーっ! 騎士様ー!」
「がんばってー!」
「俺ァあんたに賭けてんだ! しっかり勝ってくれよぉ!」
黄色い声をあげる村娘たちや観客の声援を浴びながら、クローダスは決闘の場へと立った。
「……よし!」
「頼んだぜ、大将!」
「勝ってよ、師匠!」
「もっちろん!」
一方、ノアは彼女を慕う少年少女たちへと笑顔を向け、そしてまっすぐに視線を上げながら決闘の場へと向かう。
「……さて。思っていたより随分と大ごとになってしまったようだが」
「えっへへ。……それでは、えーっと。まず、クローダス様。この度は、わたくしの挑戦をお受け下さり、まことにありがとうございます……」
かくして、2人は対峙した。
「こちらこそ。私も久方ぶりの
「じゃあ、win-winってことですね!」
ノアは満面の笑みで声をあげ、そして腰のベルトに下げたデッキケースへと触れる。
「まあ、そういうことにしておこう。……さて、約束の時間だ。皆を待たせるのも悪いからね――」
応じるように、クローダスは同じく腰のベルトに下げたデッキケースへと触れた。
「では、始めよう。
「
クローダスとノアは叫んだ。
これは
これは
クローダスとノアの2人の魔力が溶けあい、そして広がってゆく。
「「
続けて2人は声を揃えて叫んだ。
それは旧戦役時代の英雄的魔術師ジャック・ケインの逸話である3本の術式戦闘杖に因む3すくみのルールである。魔力砲撃を放つ
「
「
ここでクローダスは
「……なら、先攻はわたし!」
そう。この
そして、2人は互いに山札から6枚の
これで戦いの準備は整った。
観衆たちが固唾を飲んで見守る中、先攻であるノアがその腕を掲げて宣言する。
「
「「
2人の声が唱和した
かくして――2人の
「わたしの
「では、こちらの
初回はともにリソースへカードを置くのみの動きで終える。
「わたしの
続くノアの2ターン目。ここでノアはリソースエリアに2枚目のカードを加えると、赤を含む2コストを支払って手札から
『サンファイア・ドラゴンべビー』
ユニット/属性:赤/コスト:2/パワー:1000/《煌竜》
【条件発動】自分が手札からコストを支払って《煌竜》を召喚するとき、このユニットをトラッシュに置くことで、2コスト分を支払える。
『ぎゅいっ!』
投げられた
「わたしはこれでターンエンド!」
「ほう……。手堅いね。展開補助のユニットを立ててきたか」
クローダスは目を細めながらサンファイア・ドラゴンベビーの姿を見遣った。
(次の手番になれば彼女のリソースは3枚目に到達し、サンファイア・ドラゴンベビーの能力とあわせて5コストのユニットを展開することができる……。厄介だな)
序盤の立ち上がりとしては最善手に近いだろう。コスト5以上のユニットがこの序盤で展開されてしまえば、ものによっては試合の流れを完全に掴まれてしまう。
彼女のデッキの内容は未だ未知数だが、場合によっては
「では、こちらも手を打つべきかな……私の
クローダスの2ターン目。クローダスはカードを引き、そして手札からリソースへとカードを加える。
「メインフェイズ。私は手札からマジック『
『
マジック/属性:銀/コスト:2
【カットイン】以下の2つからどちらかを選び、使用する。
1.相手の場のコスト3以下のユニットを1体選び、相手の手札に戻す。
2.アタックしている相手のユニットを1体選び、このマジックを使ったバトル中、そのユニットのアタックでは自分はダメージを受けない。
――
クローダスは当然ながら1つめの効果を起動し、ノアのサンファイア・ドラゴンベビーを手札へと返す。これで返す
だが、そう長い時間は稼げないだろう。クローダスは自らの手に握った
「……さっすが!」
一方、ノアはこの状況を愉しんでいた。
サンファイア・ドラゴンベビーを立てることで早期から大型のユニットを展開する戦術は、彼女にとっての十八番のひとつだ。村の多くの
それを躱されたという事実は、彼女にとってここから更に熱い駆け引きと血が滾るように燃える戦いを想像させた。
返す
――一方、クローダスの展開はというと。
「私の
『守護の
ユニット/属性:銀/コスト:3/パワー:4000/《星導》
【条件発動】[ターン1回]このユニットが相手の効果で破壊されたとき、このユニットを[
【条件発動】このユニット以外の自分のコスト3以下の《星導》ユニットが相手の効果で破壊されたとき、このユニットを[
守護の
白銀に輝く鎧を纏ったその姿は、まさに堂々たる騎士の威容であった。
「私はシルディアを場に出してこのままターンエンドだ」
「破壊耐性……! なるほど、こっちのテはお見通しってわけだね!」
返す手番でノアは焦れるように笑った。
「だけど、そうこなくっちゃ……そうでなくっちゃ、挑んだ甲斐がないっ! わたしの
ここでノアは手札から4枚目のカードをリソースへと加えた。
「そして……ッ! わたしはこのメインフェイズで、サンファイア・ドラゴンベビーの能力を起動するよ!」
「……出るか、切り札が!」
ここで至ったメインフェイズで、ノアは遂にサンファイア・ドラゴンベビーの能力を起動する!
ノアはリソースの4枚を[
「さあ、これで6コストっ! さあ皆々様とくとご覧あれ! 輝け太陽、迸れ炎! 天を照らすは煌めく竜! 広がる翼に恐れおののけぃ!」
そして――ノアは手札から1枚の
観衆へと見せつけるように高々と掲げたその
「出るぞっ! 師匠の切り札だ!」
「いけいけーっ!! そのままぶっぱなせー!!」
パフォーマンスめいて見せつけられるノアの切り札に、観衆が沸き立った。
ノアはにぃと口の端をつり上げ、そしてその手の中の
「いっけえ! 天照竜アポロニアスっ!」
『天照竜 アポロニアス』
ユニット/属性:赤/コスト:6/パワー:8000/《煌竜》
【条件発動】[ターン1回]このユニットがアタックしたとき、相手の場のパワー5000以下のユニット1体か、ユニット以外のカード1枚を破壊する。破壊できなかったとき、このユニットを[
【条件発動】このユニットが相手にダメージを与えるとき、このターン中、相手の場のカードが1枚以上破壊されているなら、このユニットが相手に与えるダメージ+1
びりびりと空気を震わす号砲めいた声と戦場に立ち上がったその威容に、声援さえ送っていた観衆たちが静まり返る。
「なんと――これは」
そこに現れた炎の竜は、その名の通り輝かんばかりの光を纏っていた。
――そのパワーと能力から、クローダスはアポロニアスの
最低でも
「えっへへ……どうかな、騎士様。これがわたしの切り札……アポロニアスだよ!」
それほどまでの
「いや……驚いた。称賛しよう。掛け値なしに」
「光栄です」
「……だが、まだ君は切り札を出しただけだ。
「はい! だから……わたしは全霊で、挑戦します。この
ノアは続けざまにバトルフェイズを宣言する。
「いっけえ! 天照竜アポロニアスっ!」
その号令に従って、フィールドに立つアポロニアスが飛び立った。
「アポロニアスのアタック時能力を発揮! パワー5000以下のユニット、シルディアを破壊!」
宙を舞うアポロニアスは、眼下に捉えた女騎士の姿を一瞥するとその身体から光を放った。――熱線! 閃光がシルディアを襲う!
「くッ……だが、シルディアは自身の能力によって[
しかし間一髪! 盾を構えたシルディアは、アポロニアスのブレスを防いでいたのだ。その代償は大きく、屈した膝を立てることこそできないが――彼女は、場に残っている!
「だけど、これでアポロニアスの攻撃を止められるブロッカーはいない!」
勝ち誇るようにノアが叫ぶ。――そう。この戦いのルールにおいては、相手のユニットによる攻撃を止めるためには自分の場に[
すなわち――アポロニアスの攻撃を止められるユニットは、クローダスの盤面にはいないのだ!
「【カットイン】はありますか、騎士様!」
ここでノアはクローダスへと確認した。
【カットイン】とは、ユニットがアタック宣言を行い、アタック時能力の処理を終えたところで発生する【カットインタイミング】で使用できる能力のことである。
この【カットインタイミング】で、先にクローダスが使っていた
なお、この【カットイン】は非ターンプレイヤーに優先権があり、今の状況であればクローダスが【カットイン】を行う権利をもつ。ここでクローダスが【カットイン】を行った場合、その効果処理後に【カットイン】の権利はノアへと移り、ノアもまた【カットイン】を使用することができるのだ。
そして、お互いに【カットイン】の使用宣言をしないことを確認したら、攻撃の処理は次のステップへと進んでゆく。
「……【カットイン】はない! ライフダメージをもらおう!」
「わかりましたっ! では――いっけえ!」
ライフダメージ宣言! これにより、アポロニアスのアタックはプレイヤーへの
アポロニアスは先じてシルディアを破壊していたことにより2つ目の能力が発揮されている。――すなわち、このアタックがクローダスへと与えるダメージは、2点!
「むうう――っ!!」
ライフを砕かれる衝撃に、クローダスが苦悶した。――そして、山札の上から2枚のカードがダメージエリアへと裏向きで置かれる。
この
「これで、わたしはターンエンド!」
「ならば……私の
ノアの宣言によって、手番はクローダスへと返る。
――今の一撃は強烈だった。カードを引きながら、クローダスはダメージエリアに置かれた2枚のカードを見遣る。
まるで鉛の塊を剛腕魔獣に叩き込まれたかのような鈍い痛みとともに置かれたそのダメージは、ゲームエンドにはまだ遠いと言えど体感としてはひどく深刻な痛みのようにも感じられた。
だが、このダメージエリアに置かれた
「なかなかやるじゃないか、ノア君。正直……驚いたよ」
「お褒めにあずかり光栄ですよ、騎士様」
「すっげえ! さすが親分だ。騎士様を押してるぜ!」
「このままならひょっとして勝っちゃうんじゃないか!?」
「騎士様ーっ! がんばってー!」
戦況を見守りながら、観衆は口々に囃し立てる。
「……だが、私も王国騎士だ。このまま無様に負けを晒すことはできない。……君も望むところではないだろう? せっかく待ち侘びた
「おっしゃるとおりです、騎士様」
「では」
クローダスは4枚目のリソースを加える。
そして。
「ダメージリソースを合わせ6コスト。私もまた、切り札を切ろう」
クローダスは手札から
「御旗のもとに今こそ集え、
『戦旗の担い手・ダルク』
ユニット/属性:銀/コスト:6/パワー:5000/《星導》
【条件発動】このユニットがコストを払って手札から登場したとき、自分は山札から2枚引き、手札から1枚捨てる。その後、手札からコスト4以下の《星導》ユニットを2体までコストを支払わず召喚する。
【常時発動】自分の《星導》ユニットのパワー+1000
戦場に、旗が翻った! そこに描かれた騎士の紋章が、ここへ更なる星の勇士を導く!
「……展開補助ユニット!」
「ダルクの能力により、私は2枚ドローし手札から1枚を破棄する。そして、更に手札からユニットをノーコストで召喚!」
続け様にクローダスが
『城塞の
ユニット/属性:銀/コスト:4/パワー:5000/《星導》
【常時発動】このユニットは[
『舞剣の
ユニット/属性:銀/コスト:4/パワー:6000/《星導》
【条件発動】このユニットがアタック/ブロックしたとき、相手のコスト6以下のユニットを1体選び、そのユニットを[
「……!」
「す、すっげえ! 一気に3体もユニットを出したぞ!!」
「見ろ、しかもあの旗持ちの能力で騎士様の場のユニットはぜんぶパワーが上がってる! 出てきたやつはどれもアポロニアスで破壊できなくなってるんだ!」
再び観衆がざわめいた。劣勢に見えていたクローダスの側が、突然に盤面を切り返したのだ。これでクローダスの場にはシルディア・ダルク・ヴェガ・ケーニヒの4体のユニットが立つことになる。
「……すっごい!」
ノアは目を輝かせ、快哉を叫んだ。
「ご期待には添えたかな?」
「とっても! さすがは騎士様です」
「それは重畳。……では、私はこれでターンエンド」
そして、クローダスは手番を終える。
「なんだ? 場を整えたのにアタックしないのか?」
「多分、騎士様はまだ警戒してるのさ。場のユニットは4体だから、ぜんぶのアタックが通っても
「ああ。今の騎士様は実質的に2点分のリソースアドバンテージを得てる状態だからな。先に展開を完璧にしてから畳みかけるつもりなんだろうぜ」
「……」
聞こえる野次馬たちの声に、ノアは内心で頷いていた。
(だけど)
まだ、ノアには勝算があった。
『太陽竜プロミネンス』。……コスト7。パワー10000。パワー8000以下の相手ユニットを2体破壊することで[
この
(いまの騎士様の盤面なら……プロミネンスで切り崩せる!)
それさえ展開できれば、流れは再びノアのものだ。
「わたしの
ノアはもたらされた手番で更にリソースを増やす。これで5枚目。……プロミネンスの召喚まで、あと2ターン。
しかし、そんな悠長なことは言っていられない。恐らく相手は続く
「……わたしは手札から『サンファイア・ドラゴンベビー』を召喚してターンエンド」
だが、ここでノアは冷静さを失うことなく慎重に棋譜を進める。
恐らく、ここでアポロニアスがアタックすればクローダスはそれを素通しして更にダメージを稼ぐだろう。だが、ノアの現在の手札では残る4体のブロッカーを突破してとどめを刺せるだけの手がない。この
ここでノアがアタックしなかったのは、その展開を避けたが故である。
「慎重だね。……猪のような子だとばかり思っていたが、実に聡い。王都の
一方。手番を得たクローダスはカードを引きながらノアへと微笑みかける。
「実を言えば、私は君を侮っていた。……自分の実力を過信し、思い上がった田舎娘だとね」
「えーっ!? 騎士様といえどそれはさすがにひどいです!」
「ははは。すまない。……ならば、非礼を詫びよう」
クローダスは一度ゆっくりと頭を下げる。
そして、再び顔を上げながら、手札の
「君には私の切り札を見せるだけの実力がある。……さあ、覚悟はいいね。見せてあげよう。ここからが、私の本気だ!」
クローダスは獣のように獰猛に笑い、手にしたカードを投げ放つ!
「来たれ! 煌めく星の化身! 輝ける星空の王! 神星竜イルミナルセイバー……召喚ッ!」
『神星竜イルミナルセイバー』
ユニット/属性:銀/コスト:10/パワー:9000/《星導》
[手札]このユニットを召喚するためのコストは、自分の場の《星導》1枚につき1減る。
【常時発動】このユニット以外の自分の《星導》のユニットすべてにパワー+3000
【常時発動】自分の《星導》のユニット1体につき、このユニットのパワー+1000し、このユニットのパワーが13000以上なら、このユニットのアタックが相手に与えるダメージ+1
爆発的なエネルギー! 収束するマナ・リソースが、翼を広げた竜の姿を形作る!
戦場に降臨せしその姿は――神星竜イルミナルセイバー!
白銀めいて輝く竜鱗は瞬く星の光に似る。満天の星空がそのまま降り立ったかのように光る星の神竜は、静かにノアを見下ろした。
「お、おお……ッ!」
「こ、コスト10だって!?」
「パワー9000……いや、違う! あのカード、常時発動能力でパワー
「場に他の《星導》は4体……パワーは4000上がって13000!」
「いや、待て! 旗持ちのパワー
「ダメージ加算能力の起動条件まで満たしてるってことか……とんでもねえぞ、こいつは!」
叫ぶ観衆! 戦況を見守る村の人々が口々に言い合い、登場した
「……い、っひ!!」
しかし、その中で――口の端を吊り上げ嗤ったのは、ノアである。
(ヤバい――ヤバい! ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!)
そのこめかみにじわりと汗が浮かぶ。
ノアの盤面に立つユニットは、アポロニアスとサンファイア・ドラゴンベビーの2体。
対して、クローダスの盤面には切り札であるイルミナルセイバーを含め5体のユニットが並ぶ。
――この
ならば――ノアにできることは。
「……いいよ。来てみなよ、騎士様。……わたし、まだ負けるつもりはありませんからッ!」
だが、それで少しでもクローダスの手を鈍らせることができれば、次のターンへと希望が繋がるだろう。
しかし。
「バトルフェイズだ」
酷薄に。無慈悲に。冷徹に。クローダス・リフダーは告げた。
跳ねる心臓。早鐘を撃つ自らの心音が、ノアの鼓膜を揺さぶる。
「ケーニヒでアタック」
クローダスは指揮官めいて敵陣を指し、攻撃を宣言した。――応じて、舞剣の
「ケーニヒのアタック時能力を発揮する! 対象としてそちらの場のアポロニアスを指定!」
「……あっは!」
そして、ケーニヒのアタック時能力が起動した。その効果によって、アポロニアスが[
「【カットイン】は」
「……ないよ! ライフダメージだ!」
ざ、ッ――! 舞うように
「ぐあ……っ!!」
1点目! ノアの山札のカードがまず1枚、ダメージエリアへと落とされる!
「続けてヴェガでアタックだ!」
「く、っ……これも、【カットイン】はないよ! ライフダメージ!」
「ならばこれはどうだッ! シルディア、アタック!」
「く、ッ、そ……! 【か、ッ、ト、イン】、ッッッ!」
続く3度目のアタック――! しかし、ここでノアは【カットイン】を宣言した!
「マジック……『ファイアウォール』、ッ!」
『ファイアウォール』
マジック/属性:赤/コスト:4
【カットイン】このターンの間、相手のパワー6000以下のユニットのアタックでは、自分のライフは減らない。
――それは、事実上の敗北宣言であった。
いまアタックを宣言しているシルディアは、パワー3000。しかし、シルディアのパワーはダルクとイルミナルセイバーの能力によって、合計4000の
即ち実質的なパワーは7000――。ファイアウォールで無効化できない数値だ。結果、そのアタックはノアへとダメージを叩き込む。
「がフッ」
ダメージの衝撃にノアは吐血した。――しかし、クローダスはそれを一瞥すらせず、バトルフェイズを進行する。
残るユニットは旗手ダルク。これもイルミナルセイバーの能力によってパワーが上昇し、ファイアウォールの効果では止められないパワー8000へと強化されている。
「これで
クローダスの声に応じて、盤上の
「あ――……あ、ッ、は」
降りる光の雨を、ノアは仰ぎ見る。
「カットイン、は……ない、です」
「……ならば!」
――直撃、ッ!
イルミナルセイバーの
最後のダメージに耐え切れず、ノアの身体が衝撃に宙を舞って地面へと転げる!
「い、ひ……ひひ!」
ダメージ5――これでこの
勝者、クローダス・リフダー。
「――
クローダスは拳を掲げ、そして勝利を叫ぶ。
「……ありがとう。いい戦いだった」
「あ、ありがとう、ございます……い、いい、バトル、でした」
かくして――ここにひとつの戦いが結末を迎えたのだった。
Vanquish! けにい @kennykennyky
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